Yver,vous n'estes qu'un vilain L 92 Trois Chansons de Charles d'Orléans |
冬よ お前は嫌な奴だ シャルル・ド・オルレアンの3つのシャンソン |
Yver,vous n'estes qu'un vilain; Esté est plaisant et gentil En témoing de may et d'avril Qui l'accompaignent soir et main. Esté revet champs,bois et fleurs De sa livrée de verdure Et de maintes autres couleurs Par l'ordonnance de nature. Mais vous,Yver,trop estes plein De nège,vent,pluye et grézil. On vous deust banir en éxil. Sans point flater je parle plein, Yver,vous n'estes qu'un vilain. |
冬よ お前は嫌な奴だ 夏は心地よくて素敵な奴なのに 証人もいるそ 四月と五月だ 彼らは夏と一緒にいる 夜も朝も 夏は着せかけるのだ 野に森に花に その緑の生気を そしてまた他のあまたの彩りも 自然が命ずるままに だがお前 冬にあるのは 雪に風 雨に霰ばかり お前は追放されなくちゃならないだろう お世辞などなしに 私ははっきり言うぞ 冬よ お前は嫌な奴だ |
第1曲と共に1898年の作品ですが、1908年作曲の第2曲と合わせて3曲揃っての初演は1909年のことでした。
無伴奏混声合唱の名曲は近代フランスの主だった作曲家は皆書いているような感じですが、このドビュッシーのものも非常に印象的です。16世紀の詩人オルレアン公の詩はどれもユニークで面白いですが、この詩も冬に対して恨みつらみを実にユーモラスな表現でぶつけています。冒頭、「冬よ お前は嫌な奴だ」を力強くそしてしつこく繰り返したあと、歌は夏に対する愛情を甘く優しく歌います。このあたりの表情の豊かさは実に見事。そしてまた冬への文句になると歌には力がこもり、そして「お世辞などなしに 私ははっきり言うぞ」のところは男声に導かれてまたここもしつこく繰り返され、そして最後は「冬め 冬め」とYver(「イベ」と聞こえる)が激しく訴えられて終わります。
( 2012.02.04 藤井宏行 )