The Wonderful Widow of Eighteen Springs |
18の春のすてきな未亡人 |
night by silentsailing night. . . Isobel. . . wildwoods' eyes and primarose hair, quietly, all the woods so wild,in mauves of moss and daphnedews, how all so still she lay neath of the whitethorn,child of tree, like some losthappy leaf, like blowing flower stilled, as fain would she anon, for soon again 'twil be, win me,woo me,wed me, ah weary me! deeply, Now evencalm lay sleeping; night Isobel Sister Isobel Saintette Isobel madame Isa Veuve La belle |
夜 そしてまた静かに航海する夜... イゾベル... 原生林の目とプリムローズの髪をした 静かに すべての森はとても荒れている、フジ色をした 苔と月桂樹の中で なんとすべては静まっている 彼女は下に横たわる サンザシ、木の子供の下に まるで迷子で幸せな葉のように まるで静かに咲こうとしている花のように すぐに喜んで彼女はするようになるのだろう すぐにまたそうなるのだろう 私を口説き落として 求愛して 結婚して ああ私をへとへとにして! 深く 今 なおも静かに横わって眠る 夜 イゾベル シスター・イゾベル 聖女イゾベル マダム・イサ ヴーヴ ラ ベレ(美しき未亡人) |
20世紀英文学の怪作、ジェームス・ジョイスの「フィネガンズ・ウエイク」の一節に付けた音楽としては、アメリカの作曲家サミュエル・バーバーの書いた「ヌボレッタ」が有名ですが、同じくアメリカの作曲家ジョン・ケージの書いたこの「18の春のすてきな未亡人」(1942)も比較的よく演奏されます。
この作品、原作のp.566ページの1節より取られておりますが、原文そのままではなくフレーズを部分的に切り出して再構築しています。
http://www.themodernword.com/joyce/music/cage_widow.html
で原文とこの歌詞との比較がありましたので、そこから原文の方をお借りして下に記します。
歌詞に使われている部分は太字にしておりますが、これを見ると冒頭の1節を歌ったあとは最後のひと固まりを一気に、そして歌の最後は中間の部分よりイゾベルの名を呼び掛けるところだけを拾っていることが分かります。最後のIsa Veuve La belleはもちろん「イゾベル」の音をもじったものですね。また歌のタイトルも歌詞には入れられていませんが原文にはありますね。
訳詞の方は例によって、柳瀬尚紀氏の訳(河出書房新社)を参照させて頂きました
ケージの書いた音楽は斬新です。歌は3つの音だけで歌われるので教会での朗唱のような雰囲気を漂わせ、またピアノの伴奏がなんと鍵盤の蓋を閉めてその蓋そのものを叩いて太鼓のような響きを出しています。リンクは張りませんがYoutubeではこのライブ演奏を弾き語り?でやられているものがありましたのでご興味をお持ちの方は探してみてください。
録音では、この手の作品ではこの人しかないとも言えるキャシー・バーベリアンのもの(Wergo)が目を引きますが、最近波多野睦美さんがピアノの高橋悠治さんと組んだCD「猫の歌」でなかなか印象深く取り上げられているのが面白かったです。彼女もこうして時々、おやっと驚くレパートリーを聴かせてくれますね。
原文(フィネガンズ・ウエイク Finnegans Wake p.566の1行目〜22行目)
night by silentsailing night while infantina Isobel (who will be
blushing all day to be,when she growed up one Sunday,
Saint Holy and Saint Ivory,when she took the veil,the
beautiful presentation nun,so barely twenty,in her pure coif,
sister Isobel,and next Sunday,Mistlemas,when she looked
a peach,the beautiful Samaritan,still as beautiful and still
in her teens,nurse Saintette Isabelle,with stiffstarched cuffs but
on Holiday,Christmas,Easter mornings when she wore a wreath,
the wonderful widow of eighteen springs,Madame Isa Veuve la
Belle,so sad but lucksome in her boyblue's long black with
orange blossoming weeper's veil) for she was the only girl they
loved,as she is the queenly pearl you prize,because of the way
the night that first we met she is bound to be,methinks,and not
in vain,the darling of my heart,sleeping in her april cot,within
her singachamber,with her greengageflavoured candywhistle
duetted to the crazyquilt,Isobel,she is so pretty,truth to tell,
wildwood's eyes and primarose hair,quietly,all the woods so
wild,in mauves of moss and daphnedews,how all so still she lay,
neath of the whitethorn,child of tree,like some losthappy leaf,
( 2012.01.15 藤井宏行 )