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Rast auf der Flucht in Ägypten   Op.27-8  
  Marienleben
エジプト逃亡時の休息  
     マリアの生涯

詩: リルケ (Rainer Maria Rilke,1875-1926) オーストリア
    Das Marien-Leben 8 Rast auf der Flucht in Ägypten

曲: ヒンデミット (Paul Hindemith,1895-1963) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Diese,die noch eben atemlos
flohen mitten aus dem Kindermorden:
o wie waren sie unmerklich groß
über ihrer Wanderschaft geworden.

Kaum noch daß im scheuen Rückwärtsschauen
ihres Schreckens Not zergangen war,
und schon brachten sie auf ihrem grauen
Maultier ganze Städte in Gefahr:

denn so wie sie,klein im großen Land,
- fast ein Nichts - den starken Tempeln nahten,
platzten alle Götzen wie verraten
und verloren völlig den Verstand.

Ist es denkbar,daß von ihrem Gange
alles so verzweifelt sich erbost?
und sie wurden vor sich selber bange,
nur das Kind war namenlos getrost.

Immerhin,sie mußten sich darüber
eine Weile setzen. Doch da ging -
sieh: der Baum,der still sie überhing,
wie ein Dienender zu ihnen über:

er verneigte sich. Derselbe Baum,
dessen Kränze toten Pharaonen
für das Ewige die Stirnen schonen,
neigte sich. Er fühlte neue Kronen
blühen. Und sie saßen wie im Traum.


この者共、なおも息を切らして
逃れ去ったのだ 嬰児殺害のさなかより
おお何と彼らは完全無欠の偉大な者に
この旅の中でなったのであろうか

いまだそのおびえた振り返りの視線の中には
かれらの恐怖の苦難が消えてはいなかったが
もうすでに彼らは陥れていたのだ 灰色の
ロバの背から すべての都市を危機に

なるほど彼らは 巨大な国土の中では小さく
-ほとんど無にひとしい- だが壮大な寺院に近づくと
すべての偶像が砕け散った 裏切りにあったかのように
そして全くその意味を失ってしまったのだ

それは考えられることであろうか 彼らの行くところ
すべてがかくも怒り狂うとは?
そして彼らまでもが自らに恐れを感じた
ただ御子のみがたとえようもなく安らかであった

ともあれ彼らは休息した
道端に腰をおろし するとそこに
見よ:静かに彼らの上にある木が
従者のようにその身を傾けて

お辞儀をしたのだ 同じ木が
その花輪で死せるファラオの
額を永遠に守っているその木が
お辞儀をしたのだ 木は感じたのだ 新しい王冠が
花開くことを そして彼らは座っていた 夢見るように


メシアが誕生したことを知り、自分の地位が脅かされることを恐れた当時のユダヤの王ヘロデは、ベツレヘムに住む2歳以下の男児すべての殺害を命じます。天使のお告げによってそれを知り、エジプトへとヨセフはマリアとイエスを連れて逃れ去り、ヘロデ王の死までそこに留まります。(マタイの福音書より)
逃避行中の描写は聖書の中にはありませんので、この休息のシーンは恐らくリルケの創作でしょうか。リルケが参照した何らかの伝承があるのかも知れませんが見つけられませんでした。また彼らの従者のようにふるまった木の種類も分かりませんでした。
音楽は激しい不安を表したピアノの前奏に始まりますが、歌はけっこう穏やかに流れて行きます。最後はピアノ伴奏の響きも穏やかになり、静かに木が一行を包む様子が描写されています。

( 2012.01.08 藤井宏行 )


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