ベロ出しチョンマ |
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邦楽とクラシック音楽とを見事な技で融合し、独特の魅力を発する作品を数々書かれて来られた作曲家の三木稔氏が今年の12月8日、81歳の生涯を閉じられました。
私は氏の音楽に関してはもっぱら邦楽器のアンサンブルで演奏されるものばかりをライブで聴いていましたのであまり印象は強くはないのですが、氏の代表作として良く取り上げられるのは日本の伝統音楽を咀嚼して作り上げたオペラの分野、「ワカヒメ」や「源氏物語」「じょうるり」など題材も日本の神話や昔話より取ったものが多いようです。
そんな中でも、「歌楽」(モノオペラ)という名でまとめられている一連の作品が最も氏独自のスタイルとして目を引きます。「まぼろしの米」(歌い語りと二十絃筝による 1977)、「鶴」(歌い語りと尺八、二面の二十絃筝による 1978)、「ベロ出しチョンマ」(歌い語りと二十絃筝(またはピアノ)による 1980)などがその作品ですが、現代における「語り物」として、浄瑠璃節のスタイルを強く意識したつくりになっています。
ストーリーなど曲の詳細については、三木稔ホームページの「三木オペラ作品への招待」をご参照頂きたいのですが、全般的にドラマティックな、壮絶なお話が多いようです。
この中で唯一私が耳にしたことのあるのは、カメラ―タのCDになっている「ベロ出しチョンマ」、斎藤隆介氏の創作したお話は絵本にもなっていますのでご存じの方も多いでしょうか。江戸時代の佐倉惣五郎の物語を下敷にした悲しくも鮮烈なお話です。大人たちのいざこざに巻き込まれ、わけもわからずに殺されてしまう長松(チョンマ)と妹のウメ、義太夫の語りのスタイルを生かしたドラマティックな歌は感動的で、彼らの死のシーンでは思わず涙がこぼれてきます。
若くして亡くなった友竹正則のバリトンに、野坂惠子によるオリジナルの二十絃筝の伴奏(のちに幅広く演奏できるようにピアノ伴奏の版も出されたようです)、三木稔選集3というCDに、ほのぼのと楽しい工藤直子詩の「のはらうた」と一緒に収録されております。
( 2011.12.30 藤井宏行 )