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Nicolette   M.69  
  Tre Chansons
ニコレット  
     3つのシャンソン

詩: ラヴェル (Maurice Ravel,1875-1937) フランス
      

曲: ラヴェル (Maurice Ravel,1875-1937) フランス   歌詞言語: フランス語


Nicolette,à la vesprée,
S’allait promener au pré,
Cueillir la pâquerette,
La jonquille et le muguet,
Toute sautillante,toute guillerette,Ah!
Lorgnant ci,là,de tous les côtés.

Rencontra vieux loup grognant,
Tout hérissé,l’oeil brillant:
Hélà! ma Nicolette,
Viens-tu pas chez Mère-Grand?
A perte d’haleine,s’enfuit Nicolette,Ah!
Laissant là cornette et socques blancs.

Rencontra page joli,
Chausses bleues et pourpoint gris:
“Hélà! ma Nicolette,
Veux-tu pas d’un doux ami?”
Sage,s’en retourna,pauvre Nicolette,Ah!
Très lentement,le coeur bien marri.

Rencontra seigneur chenu,
Tors,laid,puant et ventru.
“Hélà! ma Nicolette,
Veux-tu pas tous ces écus?”
Vite fut en ses bras,bonne Nicolette,Ah!
Jamais au pré n’est plus revenue.

ニコレット、夕暮れに
野原に散歩に出かけたよ
ヒナギクを摘み
そしてスイセンや谷間のユリを摘みに行こうと
おもいきり飛び跳ね おもいきり元気良く ああ
目を配ってる あちこちの隅っこに

うなってる老いぼれ狼に出会った
すっかり毛が立って、目がギラギラしてる
「やあ!俺のニコレット
 ばあさんのとこに行くんじゃないのかい?」
息を切らせて、ニコレットは逃げた ああ
頭巾と白い木靴を残して

素敵なお小姓に出会った
青いズボンに灰色の上着を着た
「やあ!ぼくのニコレット
 優しい恋人が欲しくないかい?」
賢明にも彼女は背を向けた ああ
とてもゆっくりと、とても残念に思いながら

白髪のお殿様に出会った
腰が曲がり、醜く、臭くて腹の出た
「おい!、わしのニコレット
 この銀貨がみんな欲しくはないか?」
すばやくその腕に飛び込んだ 良い子のニコレット ああ!
もう二度と戻っては来なかった


ラヴェルの自作の詩につけた無伴奏の合唱曲、3曲3様にラヴェルの多彩なワンダーランドを見せてくれてとても魅力的です。第1曲目は「赤頭巾ちゃん」を連想させるメルヘンチックな物語、のはずでしたがシニカルなラヴェルの発想はただでは済みません。思わずニヤリとするようなオチをつけています。クラシカルな端整なメロディが淡々と流れる中こんなお話が展開するというのもいやはやなんと言うか...
各節に織り込まれた「ああ」の響きがとてもいい味を出しています。

( 2011.10.28 藤井宏行 )


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