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Le Réveil   Op.11-2  
  Deux Duos
目覚め  
     2つのデュエット

詩: バルザック (Honoré de Balzac,1799-1850) フランス
      

曲: ショーソン (Amédée-Ernest Chausson,1855-1899) フランス   歌詞言語: フランス語


Mon coeur,lève-toi! Déjà l'alouette.
Secoue en chantant son aile au soleil.
Ne dors plus,mon cœur,car la violette
Elève à Dieu l'encens de son réveil.

Chaque fleur vivante et bien reposée,
Ouvrant tour à tour les yeux pour se voir,
A dans son calice un peu de rosée,
Perle d'un jour qui lui sert de miroir

On sent dans l'air pur que l'ange des roseï
A passé la nuit à bénir les fleurs
I On voit que pour lui toutes sont écloses,.
Il vient d'en haut raviver leurs couleurs.

Ainsi lève-toi. Puisque l'alouette.
Secoue en chantant son aile au soleil.
Rien ne dort plus,mon coeur,car la violette.
Élève à Dieu l'encens de son réveil.

私の心よ 起きなさい もうヒバリが
歌いながら羽根をお日様の中で揺らしているわ
もう眠るのはやめて 私の心よ だってスミレが
神様に向かって薫らせているのだから その目覚めの香りを

生気にあふれしっかり休んだ花は
一本また一本とその目を開いて見るのです
自分の萼の中にほんのわずかな露のあることを
花たちの手鏡となる一日限りの真珠を

感じるでしょう このさわやかな大気の中 バラの天使が
花たちを祝福しながら夜を過ごしているのを
見えるでしょう 天使のためにすべてが花開き
高みから天使はやってきて花たちの彩りを蘇らせるのを

あなたもまた起きなさい! もうヒバリが
歌いながら羽根をお日様の中で揺らしているわ
もう眠るのはやめて 私の心よ だってスミレが
神様に向かって薫らせているのだから その目覚めの香りを


ショーソンの書いたデュエット曲Op.11、第2曲の詩はなんと「人間喜劇」で知られたフランスの小説家バルザックです。もちろんこれは単独の詩ではなくて、その「人間喜劇」の中の一部をなす彼の小説「モデステ・ミニョン Modeste Mignon」の中に挿入されたものです。恋する主人公の乙女モデステがピアノに向かって自ら作曲したことになっているこの曲、小説では「若い乙女の歌」というタイトルでで、更に興味深いのは小説にもこの詩につけた曲の楽譜が掲載されているということです。もちろんこれはショーソンの書いたものではなくて、バルザックの時代のオペラ作曲家として知られるオーベール(Daniel-Francois Auber (1782-1871))のものなのですが。
時代が下ってショーソンの書いたデュエットはぐっと精緻で、浮遊感のあるメロディが紡ぎ出されていきます。ため息がでるほど美しいこの歌、私にはショーソンの書いた歌曲の中でも私は1、2を争う魅力的なものだと思えます。ソロ歌曲ではないということでなかなか取り上げられないのがとても残念。シェーファーの録音したショーソン&ドビュッシー歌曲集に入れられていたのはたいへん嬉しい驚きでした。
今入手できそうなのはHyperionのショーソン歌曲集(Geraldine McGreevy (soprano)・ Ann Murray (mezzo-soprano) )かTimpaniの同じくショーソン歌曲集(Sandrine Piau (soprano)・Brigitte Balleys (mezzo-soprano))のいずれかでしょうか。いずれも素敵ですが、華やかな感じの前者よりは私としては後者の透明感の深さにより惹かれるものがあります。ピオーの歌声がとりわけ美しく響いて魅力的です。

( 2011.10.22 藤井宏行 )


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