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浜千鳥    
 
 
    

詩: 鹿島鳴秋 (Kashima Meishuu,1891-1954) 日本
      

曲: 弘田龍太郎 (Hirota Ryutarou,1892-1952) 日本   歌詞言語: 日本語


青い月夜の 浜辺には
親を探して 鳴く鳥が
波の国から 生まれ出る
濡た翼の 銀の色

夜鳴く鳥の 悲しさは
親を訊ねて 海こえて
月夜の国へ 消えてゆく
銀の翼の 浜千鳥



千鳥というのが冬の季語ということもあってか、大変に悲しげな寒々とした雰囲気の詩ですが、音楽はむしろ暖かく包み込むようなもので不思議な魅力を醸し出しています。詩人の鹿島鳴秋(1891-1954)がこの詩を書いたのは1919年の初夏のこと。訪れた新潟・柏崎の海岸を眺めてのことだといいます。
彼は幼いころに父が失踪し、母も再婚してしまったことから祖母に育てられることとなり、この詩にもそんな親の愛を得られなかった詩人の寂しさがにじみ出ているのでしょうか。その後、彼は1930年には愛娘が肺結核で先立つという不幸にも見舞われています。この娘を亡くした寂しさをこの詩に織り込んだという解説も時折目にしますが、1919年作が本当であればそれは時期的に合わないですね。
弘田の息の長いメロディはさすがに見事です。石川さゆりや森昌子といった演歌系の歌手が好んで取り上げているばかりでなく、山崎ハコや石川セリといったひとたちの意外な歌も聴くことができます。クラシック系ではやはり、先日死去されたテノールの五十嵐喜芳のものがいいでしょうか。やさしく暖かい雰囲気が味わい深く表現されています。

( 2011.10.02 藤井宏行 )


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