Violons dans le soir |
夕暮れのヴァイオリン |
Quand le soir est venu,que tout est calme enfin Dans la chaude nature, Voici que naît sous l'arbre et sous le ciel divin La plus vive torture. Sur les graviers d'argent,dans les bois apaisés, Des violons s'exaltent. Ce sont des jets de cris,de sanglots,de baisers, Sans contrainte et sans halte. Il semble que l'archet se cabre,qu'il se tord Sur les luisantes cordes, Tant ce sont des appels de plaisir et de mort Et de miséricorde. Et le brûlant archet enroulé de langueur Gémit,souffre,caresse, Poignard voluptueux qui pénètre le coeur D'une épuisante ivresse. Archets,soyez maudits pour vos brûlants accords, Pour votre âme explosive, Fers rouges qui dans l'ombre arrachez à nos corps Des lambeaux de chair vive! |
夕暮れがやってきて あらゆるものはとうとう静かになった 暖かい自然の中 木の下に 神々しい空の下に訪れたのは あまりに大きな苦悩 銀色に輝く敷石の上 静かな森の中 ヴァイオリンの響きが立ち昇る 叫びの すすり泣きの くちづけの調べが 止まることも 絶えることもなく その弓はこすれ よじれているようだ 輝く弦の上を それは真の叫びなのだ 喜びの 死の そして慈悲の 燃え上がる弦は苦悩に傷付き うめき、苦しみそして愛撫する この心を貫く官能的な短剣だ 疲れ果てた逸楽の 弓たちよ 呪われるがいい お前たちの熱い和声のために お前たちの弾ける魂のために 闇の中の赤く燃えた鉄が私たちの体を切り裂く 生きたこの体をずたずたに! |
ヴェルレーヌの有名な「秋の日の ヴィオロンの」、あるいはシャンソンの名曲「私の心はヴァイオリン」など、フランスの秋の光景にはヴァイオリンが似合います。そんないかにもという感じの詩に、サン=サーンスはピアノとヴァイオリンの伴奏をつけた見事な哀愁の曲を書きました。ヴァイオリンは伴奏というよりは歌と拮抗するソロといった扱いで大活躍し、ひときわムードを盛り上げてくれます。詩のAnna Elisabeth Mathieu de Noailles (1876-1933)はパリの生まれですが一家はルーマニアの王家につながる名家だそうで、 フランスの貴族ノアイユ家に嫁ぎ、Comtesse(伯爵夫人)の称号がついて呼ばれることもあります。彼女は当時の文学者たちとの交流が深く、自らも小説や詩を書いていた文人マダムでした。
( 2011.09.24 藤井宏行 )