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Natur   Op.8-1  
  6 Orchesterlieder
自然  
     六つのオーケストラ伴奏歌曲

詩: ハルト,ハインリヒ (Heinrich Hart,1855-1906) ドイツ
      

曲: シェーンベルク,アルノルト (Arnold Schonberg,1874-1951) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Nacht fließt in Tag und Tag in Nacht,
der Bach zum Strom,der Strom zum Meer -
in Tod zerrinnt des Lebens Pracht,
und Tod zeugt Leben licht und hehr.

Und jeder Geist,der brünstig strebt,
dringt wie ein Quell in alle Welt,
was du erlebst,hab ich erlebt,
was mich erhellt,hat dich erhellt.

All' sind wir eines Baums Getrieb,
ob Ast,ob Zweig,ob Mark,ob Blatt -
gleich hat Natur uns alle lieb,
sie,unser aller Ruhestatt.

夜は昼へと流れ込み そして昼は夜へ
小川は大河に、大河は海へと
死の中で溶けて流れる 生の華やぎは
そして死は生を輝かしく崇高に照らし出すのだ

そしてあらゆる魂は、発情したように生き残らんとして
泉のようにこの世界に湧き出してくる
お前が経験することは、私が経験してきたことだ
私を照らし出すものは、お前を照らし出してきたものだ

すべては木のパーツに過ぎない
大枝か、小枝か、葉髄かそれとも葉か
自然はわれわれを皆同じように愛し
われわれすべての憩いの場なのだ


シェーンベルクの作品8はオーケストラ伴奏による6曲からなる歌曲、それまでの歌曲にならって詩人の選択は多彩ですが、後半3曲がペトラルカのソネットからのドイツ語訳をまとめて取り上げているのが注目でしょうか。作曲時期は1903-1905と、作品6のピアノ伴奏の歌曲集とかぶっておりますけれども、伴奏がオーケストラだけにシェーンベルクの才気がピアノ伴奏以上に如実に表現されているように思われます。個人的には初期の代表作とされる「グレの歌」よりもずっと鮮烈で魅力的な作品ではないかと思うのですが、なぜかこの作品録音には恵まれず、めったに聴かれることのない幻の作品と化してしまっております。
LP時代にはドホナーニ指揮のウィーンフィルハーモニーの伴奏で、ワーグナー歌手として鳴らしたアニヤ・シリアの歌ったもの(Decca)がありましたが、CD時代になってからはとんとご無沙汰で、比較的最近の録音で私が耳にしたことのあるのはやはり現代のワーグナー歌手として知られたエヴァ・マルトン、ハンガリー出身の彼女がジョン・カレウェ指揮のブダペスト交響楽団の伴奏で歌ったものくらい(Hungaroton)、もっともこれがなかなかに鮮烈で素晴らしい演奏なのでけっこう満足しております。
あともう一枚はロバート・クラフトがシェーンベルクの作品を集中して十数枚のCDにしている録音の中に含まれているジェニファー・ウェルチ=バビッジのソプラノにクラフト指揮のフィルハーモニア管弦楽団の伴奏。歌い手がちょっとリリカル過ぎるのと、伴奏の響きがくぐもっていて音楽の鮮烈さがいささか減退して聴こえてしまっているのが残念ですが、この曲の抒情的な側面はよく表現されているでしょうか。こちらはNaxosレーベルで現在でも容易に聴けるものと思います。

第1曲はブラスの静かなコラールで始まりますが、自然の賛美をする場面でオーケストラが分厚く盛り上がり、歌声と精緻に絡み合いながらいわく言い難いカタルシスを感じさせます。

( 2011.07.09 藤井宏行 )


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