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La perla   S.326  
 
真珠  
    

詩: ホーエンローエ家の王女テレーゼ (Princesse Therese von Hohenlohe,-) ドイツ
      

曲: リスト (Franz Liszt,1811-1886) ハンガリー   歌詞言語: イタリア語


Sono del mare bianca la figlia,
son di conchiglia pegno d'amor.
Nella nativa carcere oscura
vivo sicura senza dolor.

Madre amorosa mi chiude in seno,
fronte sì piena di voluttà.
Aura non beo,luce non veggo,
eppur non chieggo più libertà.

Ahi! se per forza dal fondo mio
tolta son io,tratta la sù,
a lume giungo,l'aer respiro,
ma già sospiro per schiavitù!

In vil mercato passo venduta
e rivenduta col nuovo sol,
chi non si cura di mia bellezza,
chi l'accarezza,chi sua la vuol.

Finché per ultimo forse in un serto
di spin conserta io brillerò,
e come lagrima pendula al ciglio,
il duol d'esiglio accuserò.

私は海の白い娘です
私は貝の愛の印です
生まれた暗い牢屋の中で
安全に苦しみなく暮らしてきました

愛する母さまが私をその胸の中に閉じ込め
そのお顔はとても喜びに満ちていました
そよ風を感じることもなく、光を見ることもなく
それでも私はそれ以上の自由は欲しくありませんでした

ああ!もしもむりやりにこの海の底から
私がこの地上へと連れ出されたなら
光に照らされ、大気を吸うことに
けれど奴隷の身に溜息をつくことになるのです!

下賎な市場で私は売られ
また売られるのです 新しい太陽が昇るごとに
ある人は私の姿など気にも留めないし
ある人は愛撫するでしょう、ある人はそれが欲しいと思うのです

最後は たぶん冠の中
組み付けられて私は輝きます
そしてまつ毛にかかる涙の粒みたいに
追い出されたものの悲しみに苛まれるのです


ホーエンローエ家といえばドイツ・バイエルンにあるフランケン地方を治めた貴族なのですが、ここでその令嬢が書いたのはイタリア語の詩です。何とはなしに深窓の令嬢の悲しみと不安が綴られているように思えるのは私の偏見でしょうか。リストの音楽はしかしながらひたすらロマンティックにそして穏やかにこの物語を綴っていきます。それもあって少々地味なのと、にも関わらず5分以上もかかる大曲であるのが災いしてか(それと歌詞がイタリア語であることもあってか)、歌われるのが多くないリストの歌曲の中でも特に取り上げられることが稀になってしまっています。しかしじっくり聴いてみると実に味わい深く、令嬢の心の訴えを慎ましくも魅力的に伝えてくれているようです。

( 2011.06.30 藤井宏行 )


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