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Prorok   Op.49-2  
  Dva Ariozo
預言者  
     2つのアリオーソ

詩: プーシキン (Aleksandr Sergeyevich Pushkin,1799-1837) ロシア
      Пророк (1826)

曲: リムスキー=コルサコフ (Nikolai Andreyevich Rimsky-Korsakov,1844-1908) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Dukhovnoj zhazhdoju tomim,
v pustyne mrachnoj ja vlachilsja,
i shestikrylyj serafim
na pereput’e mne javilsja;

perstami legkimi,kak son,
moikh zenits kosnulsja on:
otverzlis’ veshchie zenitsy,
kak u ispugannoj orlitsy.

Moikh ushej kosnulsja on,
i ikh napolnil shum i zvon:
i vnjal ja neba sodrogan’e,
i gornikh angelov polet,
i gad morskikh podvodnyj khod,
i dol’nej lozy prozjaban’e.

I on k ustam moim prinik
i vyrval greshnyj moj jazyk,
i prazdnoslovnyj,i lukavyj,
i zhalo mudryja zmei
v usta zamershie moi
vlozhil desnitseju krovavoj.

I on mne grud’ rassek mechom,
i serdtse trepetnoe vynul,
i ugl’,pylajushchij ognem,
vo grud’ otverstuju vodvinul.

Kak trup,v pustyne ja lezhal.
I boga glas ko mne vzyval:
Vosstan’,prorok,i vizhd’,i vnemli,
ispolnis’ voleju moej
i,obkhodja morja i zemli,
glagolom zhgi serdtsa ljudej.

心の渇きに耐え兼ね
陰鬱な砂漠を、私はさまよっていた。
そこへ6つの羽を持つ天使が現れ
道に私は立ちつくした。

天使は夢のように軽やかにその指を
私の瞼に当てた。
すると私の鷲のような眼は
開き彼方を見渡した。

彼が指を私の耳に当てると
怒涛のような響きが鼓膜に伝わって来た。
私は天の調べを聴いたのだ。
空に天使たちが飛び交い
海の魔物が泳ぎまわり
谷間に蔦の伸びる音を

そして天使は私の口へとかがみこみ
罪深い私の舌を引き抜いた。
嘘と虚栄を紡ぎ出すこの舌を。
そこに賢い蛇の舌を
私の痺れた口の中へと
血まみれの右手で押し込んだ

天使は短剣で私の胸を切り裂くと
脈打つ心臓を取り出し
燃え盛る炭火を
開かれた胸の穴へと詰め込んだ

死体のように、砂漠に私は横たわっていた
そこに神からの声が届いた。
「起て、預言者よ。そして見よ、聞け。
我が意志に満たされよ
海と陸地を巡り
言葉で人々の心を燃やすのだ」


 R?コルサコフの歌曲を一言で表現するとすれば、「雄弁」ということになるのでしょうか。ロシアン・ロマンス(歌曲)の中でも旋律の美しさでは屈指の曲がたくさんあるのですが、チャイコフスキーのような洗練とは程遠く、ラフマニノフのようにトロトロの叙情に浸り込むという感じでもありません。美しいメロディーがこれでもか・これでもかと目の前に投げつけられるという、将に「シェエラザード」世界の音楽です。
ご紹介するのはそんな彼の作品の中でもひときわ「濃い」もので、詩は完全にスプラッターな上に、音楽もピンと張り詰めて強烈です。最後の神からの言葉など、ピアノの叩き付ける下降音形に恐ろしい神の啓示を聴いてしまいますし、そこに至るまでのいたぶられ方ときたら...
残念ながらCDはなかなか出ていなくて、割と容易に入手できそうなのがB.クリストフのロシア歌曲集の5枚組なのですが、残念ながらここではオーケストラ伴奏になっています。(ピアノの伴奏の方が私は緊迫感があると思う)
こういうロシア歌曲はLP時代にはいろいろ聴けたのですが、CDになってからはどうも欲求不満の残る品揃えで残念です。
(1999.05.02)

ブログのコメントでご指摘頂きました通り、ここでのタイトルは「予言者」ではなく「預言者」であるべきですね。修正しておきました。
これはプーシキンの1826年の詩。ちょうど首都サンクトペテルスブルクへ呼び戻された時のものです。皇帝にも謁見する機会のあった彼は、この世に神の真実の言葉を伝えるのだ、という気負いをこの詩に託して書いたのでしょう。実際はデカブリストたち反体制派への影響力を恐れた皇帝による飼い殺しに近い仕打ちがこれから始まり、死ぬまでプーシキンにも苦悩の時が続いたのではありますが...
この曲、力のあるバス歌手によって歌われると、最後の盛り上がりは物凄い迫力です。リムスキー=コルサコフの歌曲としてはちょっと異色な系統のようにも思えますが、聴いてのインパクトは絶大なものがあります。

( 2008.09.28 藤井宏行 )


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