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Music for a while   Z.583-2  
 
暫し楽の音に  
    

詩: ドライデン (John Dryden,1631-1700) イングランド
      

曲: パーセル (Henry Purcell,1658-1695) イギリス   歌詞言語: 英語


Music for a while,
Shall all your cares beguile:
Wond'ring how your pains were eas'd
And disdaining to be pleas'd
Till Alecto free the dead
From their eternal bands,
Till the snakes drop...from her head
And the whip from out her hands.
Music for a while,
Shall all your cares beguil.

暫し聴く樂の音に
あなたの悩みはみな癒されよ
痛みが消え去ること奇跡の如く
軽薄な慰みなど見向きもせず
女神アレクトが死せる者たちを
その永遠のくびきより解き放つ時まで
彼女の頭より蛇が落ち
手より鞭が落ちるその時まで
暫し聴く樂の音に
あなたの悩みはみな癒されよ


英語なので全訳は省略。
一箇所どうしてもよくわからないのは4行目。「喜ぶこと(喜ばされること)を蔑みつ」となっているが、どうして音楽を聴いて喜んではいけないのだろう?「暫し楽の音にもろもろの君が憂い紛らわせよ、痛みいかに和らぐかに驚きつ…」と最初の3行にあるのに。

パーセルは何しろ17世紀の人であるから英語だって意味も変わっているはず。そこで ”please” = 『喜ぶ、嬉しがらせる』 の本来の意味は違ったのか、あるいは他に意味があるのかと思い何種類か辞書を引いてみたが解説は大差ない。
ただ、the play just to please だったか、「面白がらせるだけの芝居」という例文があったので、4行目は「面白おかしがるだけではなくて」ということか。さもないと意味がわからない。「遊興娯楽を蔑みつ」と訳すことにしよう。要は音楽を心に響かせろと言っているのではなかろうか。

古楽系の歌手には定番のこの曲、自分が所有しているCDもルネ ヤーコブスの歌ったものだが、カークビーやらマクネアーやらボットーやらCDは何種類もあったと思う。
忘れられないのは1997年3月、ソウルでのホロストフスキー(br)のリサイタルでアンコールに歌われたとき。日本人に比べると断然騒がしい韓国人(一部ロシア人)の聴衆がピタッと静まり、ちょっとくたびれたモダンなKBSホールがパーセルの格調高い調べに満たされ大聖堂のように感じられたあの瞬間。おかげで今でも時折この歌を聞いたり口ずさんだりしているとソウルの街並みが思い浮かぶことがある。嗚呼、ミスマッチ。

(1999.05.21有松 “tora” たかね)

ページ構成を改めるのに合わせ、勝手ながら訳詞を追記しました。
この曲、歌劇「オイディプス王」の中のアリアなのですね。女神アレクトというのはギリシャ神話の中の復讐の女神なのだそうです。(2004.09.21 藤井)

( 2004.09.21 有松 “tora” たかね/藤井宏行 )


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