Barfotasanger |
歌曲集 裸足の歌 |
詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
|
|
スウェーデンの「怒れる男」として、その冷たく暗い交響曲がマーラー、ショスタコーヴィッチの流れで人気のある作曲家アラン・ペッテションは、少年時代の悲惨な生活(アルコール中毒の父親からの暴力や貧困、感化院での生活)から這い上がって作曲家となった異色の人です。その苦しみの記憶やさらに歳を取ってからの病といった次々襲う不幸は彼に途方もなく暗い、巨大な交響曲群(全部で16曲もある)を書かせた訳ですが、そんな彼に少年時代の記憶をもとに作詩作曲した「裸足の歌」という歌曲集があると聴けば、誰しも凄惨な歌曲を期待してしまうことでしょう。
全部で24曲からなるこの歌曲集の各曲のタイトルは
1.嘆きの歌
2.賢く、そしてしっかり握れ
3.母は貧しい
4.愛は間違う
5.星と鉄格子
6.なくした何か
7.花よ、語れ
8.冬の歌
9.大きくなるまで待って
10.乙女とそよ風
11.吟遊詩人の天国への旅
12.君は知っているだろう
13.嘘つき
14.主は牧場を行く
15.海辺の犬
16.ささいな口論
17.私は考える
18.足元の花
19.なくしもの
20.私のあこがれ
21.さあ冬が来る
22.日曜の国にいる友
23.ハエが飛ぶ時に
24.光が消えていく
まさにキワモノ好きを引き付ける興味深いタイトルばかりです。ところが、
「年老いたロバや愛する家族
やせ細った多くのものごとに比べても
私の神様への捧げ物は何よりも少ない」(嘆きの歌)
と始まるこの歌曲集を聴き始めると、民謡のような素朴な旋律で驚かされます。なるほど彼の交響曲のファンには無視されるはず...
第一曲の「嘆きの歌」はしみじみとして、私が連想したのは「かあさんがよなべをして」で始まる「かあさんの歌」。
それ以降の歌も、詩はともかく、音楽は凄惨になることなく優しい癒しのように歌われていきます。ひとつにはこれが、彼がまだ20代半ばの非常に若い時期に書いたということもあるのかも知れません。
録音は、北欧歌曲では様々な名唱を聴かせてくれるフィンランドのソプラノ、モニカ・グループのもの(CPO)が入手も容易でしょうし
美しい歌唱ですが、そんなに歌はうまくないものの朴訥な感じが曲想に見事にマッチした、エリック・セーデンのバリトンのSweedish Society盤の方が私には面白く聴けました。
( 2004.06.10 藤井宏行 )