野焼のころ 日本の笛 |
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山は野焼か まだ春寒か 逢わず帰るか 夜のふけか 野火のちょろり火 一山越して 燃えて行たやら 消えたやら 野火の火立(ほだち)の 薄れた頃か 明けの山鳥 ほろと啼く |
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平井康三郎の「日本の笛」の最終曲。前の曲と対照的に、こちらは早春の情景です。山の枯れ草に火を放つ野焼きが行われている時期、夜更けに山には炎が見えています。山の向こうには逢いたい人がいるのでしょう。逢いに行こうかどうしようか思い悩んでいるうちに夜がうっすらと明けてきて野火も弱まってきている。
静かに、穏やかに曲は流れ、そして最後はこの野火と同じように消え行ってゆきます。
( 2011.02.26 藤井宏行 )