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Fancy   FP 174  
 
恋する心   
    

詩: シェイクスピア (William Shakespeare,1564-1616) イングランド
    The Merchant of Venice (ヴェニスの商人) Act.3 Scene.2 Tell me where is fancy bred

曲: プーランク (Francis Poulenc,1899-1963) フランス   歌詞言語: 英語


Tell me where is fancy bred,
Or in the heart,or in the head?
Now begot,how nourished?
Reply,reply,reply.

It is engender'd in the eyes,
With gazing fed; and fancy dies
In the cradle where it lies.
Let us all ring fancy's knell:
I'll begin it,- Ding,dong,bell.

恋する心はどこに宿る?
心の底か、頭の中?
どうやって生まれ、どうやって育った?
教えておくれ 教えておくれ

恋する気持ちは目の中で生まれ
見つめることで育っていくが
生まれ育った目の中で死ぬ
さあさ鳴らそうよ、弔いの鐘
最初は私が、ディン、ドン、ベル


「ヴェニスの商人」第3幕、ポーシャ姫の求婚者バッサーニオがその願いを成就させるために、金・銀・鉛の箱からひとつを選ぶ試練を受けるシーンで歌われる歌です。Fancyというのは軽い、気まぐれな恋心といったところで、美しい容姿にだけ惹かれるような恋心などはかないものだ、ということを表していて事実、バッサーニオを他の求婚者達と違い、鉛の箱を選んで見事課題をクリアします。
この歌にはなんと、フランスの20世紀のメロディスト、フランシス・プーランクが曲を付けています。彼のもつのびやかな旋律が、ゆったりと、しみじみと歌われて、この哲学的とも言える深い味わいの歌を生み出しています。面白いのは、この曲はH.ジェイムスのサイコ・ホラーをもとにしたブリテンのオペラ「ねじの回転」の不気味な子供たち、マイルスとフローラに捧ぐ、と副題にあることです。

私が聴いたのはプーランク歌曲全集(EMI)にあるアメリンクのソプラノ、しみじみとした味わいが伸びやかな美しい声とあいまってなかなか良いです。子守り歌のような優しさがこの演奏の特徴でしょうか。ピアノ伴奏はG.パーソンズです。もうひとつはシェイクスピアにちなむ歌曲をシューベルトの「シルビアに」からブラームス、R・シュトラウスetcと色々紹介しているメゾソプラノのサラ・ウォーカーのHyperion盤(Shakespeare's Kingdum)伴奏はG.ジョンソン。こちらはもう少しゆったりと、彼女のメゾの声は恋の酸いも甘いも知り尽くした大人の魅力といった感じでしょうか?最後のディン、ドン、ベル余韻の残し方など、私はこちらの方が気に入りました。

( 2003.04.05 藤井宏行 )


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