Im Rhein,im schönen Strome S.272 |
ラインの 美しき流れに |
Im Rhein,im schönen Strome, Da spiegelt sich in den Wellen Mit seinem großen Dome Das große,das heilige Köln. Im Dom da steht ein Bildnis, Auf goldnem Leder gemalt; In meines Lebens Wildnis Hat's freundlich hineingestrahlt. Es schweben Blumen und Eng'lein Um unsre liebe Frau; Die Augen,die Lippen,die Wänglein, Die gleichen der Liebsten genau. |
ラインの 美しき流れに その波の中に映し出されているのは 巨大なドームを持つ かの壮大な、ケルンの大聖堂 ドームの中にはひとつの肖像画が 金色の皮の上に描かれている ぼくの人生の荒野の中に それは友好的な光を投げかけてくれた 漂う花と天使たちが われらが愛する女性のまわりにある その瞳、その唇、その頬は あの恋人と全く一緒なのだ |
シューマンの歌曲集「詩人の恋」の中にもあってドイツリートを聴かれる方にはおなじみのハイネのこの詩、シューマンがテキストに用いた版ではライン川は「聖なる流れ Heiligen Strome」となっており、曲全体の印象がこの時点でリストのつけたものとまったく違ってきています。「聖なる」で受けたシューマンの曲が重厚で荘厳な感じを漂わせているのに対し、リストの曲は華麗で憧れに満ちています。この詩が恋の詩であることを感じ取らせてくれるという点でリストのものも、シューマンの曲ほど知られておりませんが聴いてみる価値はあるでしょう。リストはこの曲を一度改訂しており、最初のバージョンはより華やかな伴奏と共に熱い恋歌になっています。改訂後は華麗さが幾分抑えられましたが、美しいメロディは健在です。
( 2011.01.15 藤井宏行 )