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Cygne sur l'eau   Op.113  
  Mirages
水の上の白鳥  
     幻影

詩: ブリモン (Mme la Baronne Renée de Brimont,1880-1943) フランス
    Mirages (1919)-De l'eau et des paysages(水と風景) 1 Cygne sur l'eau

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


Ma pensée est un cygne harmonieux et sage
Qui glisse lentement aux rivages d’ennui
Sur les ondes sans fond du rêve,du mirage,
De l’écho,du brouillard,de l’ombre,de la nuit.

Il glisse,roi hautain fendant un libre espace,
Poursuit un reflet vain,précieux et changeant,
Et les roseaux nombreux s’inclinent quand il passe,
Sombre et muet,au seuil d’une lune d’argent;

Et des blancs nénuphars chaque corolle ronde
Tour à tour a fleuri de désir ou d’espoir …
Mais plus avant toujours,sur la brume et sur l’onde,
Vers l’inconnu fuyant glisse le cygne noir.

Or j’ai dit: “Renoncez,beau cygne chimérique,
À ce voyage lent vers de troubles destins;
Nul miracle chinois,nulle étrange Amérique
Ne vous accueilleront en des havres certains;

Les golfes embaumés,les îles immortelles
Ont pour vous,cygne noir,des récifs périlleux;
Demeurez sur les lacs où se mirent,fidèles,
Ces nuages,ces fleurs,ces astres,et ces yeux.”

私の思いは一羽の白鳥 調和のとれて穏やかな
倦怠の岸辺をゆっくりと滑りゆく
果てしなき波の上を、夢、まぼろし
こだま、霧、影、そして夜の波の

それは滑りゆく、尊大な王が広い空間を押しのけて進むように
貴いがうつろいやすい空しき幻影を追い求めている
たくさんの葦がうなだれるのだ それが通る時に
陰鬱に押し黙って、銀色の月の照らし出すところ

そして白いスイレンの丸い花冠のそれぞれが
代わる代わるに願いや望みの花を咲かせていた
だが更に先へ、霧の上を 波の上を
逃げてゆく未知へ向かい 黒い白鳥は滑ってゆく

私は言った「あきらめるのだ 美しい幻の白鳥よ
定かならぬ運命へと向かうそのゆったりした旅を
不思議の中国にも 異郷のアメリカにも
おまえを確かな港として受け入れはしないのだ

香り立つ入江も、不死の島も
おまえのために、黒い白鳥よ、危険な暗礁を準備している
この湖に留まるのだ いつも変わらず姿を映し出す湖に
雲や、花や、星や、瞳の姿を


フォーレ74歳の作品。詩人の詳細は不明で、生没年も調べ切れませんでした。名前の前のタイトルにBaronneとありますので男爵夫人でしょうか。女性らしい繊細な詩と思えば思えなくもありません。
Hyperionの全集にあるグレアム・ジョンソンの解説では詩人はSapphic、つまり古代ギリシャの詩人サッフォーのような同性愛の味わいが詩にはあるようなことが書かれておりましたが、それ以上に詩集のタイトルどおりの幻想的な表情が魅力的です。フォーレ晩年の抑制された音楽が良く合って、詩を読み込んでから聴くとたいへん素晴らしい曲集です。

第一曲目は静かな湖の上をゆったりと動く黒鳥の描写。cygneという鳥の名が日本語では「白鳥」となっておりますので、訳詞では少々不自然な気もしますが「黒い白鳥」としました。

( 2010.12.23 藤井宏行 )


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