She sleeps on soft,last breaths Op.60-6 Nocturne |
彼女は穏やかな最後の吐息をつき眠る 夜想曲 |
She sleeps on soft,last breaths; but no ghost looms Out of the stillness of her palace wall, Her wall of boys on boys and dooms on dooms. She dreams of golden gardens and sweet glooms, Not marvelling why her roses never fall Nor what red mouths were torn to make their blooms. The shades keep down which well might roam her hall. Quiet their blood lies in her crimson rooms And she is not afraid of their footfall. They move not from her tapestries,their pall, Nor pace her terraces,their hecatombs, Lest aught she be disturbed,or grieved at all. |
彼女は穏やかな最後の吐息をつき眠る、だか霊魂はさまよい出ない 彼女の宮殿の壁の静けさの外へは 少年の上に少年を重ね、悲運の上に悲運を重ねた彼女の壁の 彼女は夢を見る 金色の庭と甘い陰鬱さの どうして彼女のバラが決して散らないのかに驚くこともなく どれほどの赤い口がバラが花咲くために引き裂かれるのかにも驚かずに 彼女の大広間をうろついていても良かった影たちはじっとしている 静かなその血は彼女の赤い部屋の中に横たわっている そして彼女は影たちの足音をまるで恐れないのだ 影たちは彼女のつづれ織、棺の覆い布から動こうとしない テラスの上、彼らの生贄のところを歩き回ることもない 彼女の眠りが妨げられたり、悲しませられたり全くしないようにと |
ハウスマンの詩集「シュロップシャーの若者」の舞台シュロップシャー出身で、あの詩集で登場する若者のように「醜く生きながらえるよりは美しく死にたい」という生きざまを実践したのでしょうか?第一次世界大戦で若くして戦死した詩人ウィルフレッド・オーウェン Wilfred Owen (1893-1918)の詩がここでは取り上げられています。従軍した経験をたくさんの詩に紡ぎ出したことから「戦争詩人 War Poet」と呼ばれ、ブリテンの大作「戦争レクイエム」でもその詩が取り上げられていますが、ここでは戦争の詩ではありません。死を前にした女性の姿のようですが、詩の言葉が難解で、どう努力しても私には意味が取れませんでした。そうは言いながらひとつひとつの言葉を追っていくとなかなかに鮮烈なビジュアルイメージが湧いてきます。“Wall of boys on boys”なんていうのは何とも艶めかしい限りです。詩のタイトルは“The Kind Ghosts”というもののようですが、そのGhostsというのが何者なのかは最後まで分かりませんでした。
音楽は弦に加えてイングリッシュホルンの伴奏が付きます。物憂げなその響きは最後の眠りというにふさわしい感じもします。
( 2010.12.04 藤井宏行 )