風が立ち、浪が騒ぎ 盲目の秋 |
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風が立ち、浪が騒ぎ、 無限の前に腕を振る。 その間(かん)、小さな紅(くれなゐ)の花が見えはするが、 それもやがては潰れてしまふ。 風が立ち、浪が騒ぎ、 無限のまへに腕を振る。 もう永遠に帰らないことを思つて 酷白(こくはく)な嘆息するのも幾たびであらう…… 私の青春はもはや堅い血管となり、 その中を曼珠沙華(ひがんばな)と夕陽とがゆきすぎる。 それはしづかで、きらびやかで、なみなみと湛(たた)へ、 去りゆく女が最後にくれる笑(ゑま)ひのやうに、 厳(おごそ)かで、ゆたかで、それでゐて佗(わび)しく 異様で、温かで、きらめいて胸に残る…… あゝ、胸に残る…… 風が立ち、浪が騒ぎ、 無限のまへに腕を振る。 |
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盲目の秋
( 2010.11.26 藤井宏行 )