Der Schatzgräber Op.45-1 Romanzen und Balladen I |
宝を掘る男 ロマンスとバラード第1集 |
Wenn alle Wälder schliefen, Er an zu graben hub, Rastlos in Berges Tiefen Nach einem Schatz er grub. Die Engel Gottes sangen Dieweil in stiller Nacht, Wie rote Augen drangen Metalle aus dem Schacht. “Und wirst doch mein”,und grimmer Wühlt er und wühlt hinab! Da stürzen Steine und Trümmer Über den Narren herab. Hohnlachen wild erschallte Aus der verfallnen Gruft, Der Engelsang verhallte Wehmütig in der Luft. |
森がすべて眠ったとき 彼は掘り始めた 休むことなく山の底深く 宝を求めて 彼は掘った 神の天使たちは歌っていた その間じゅうずっと 静かな夜中 すると赤い目のようにきらめいた 金属のようなものが穴の奥から 「俺のものだ!」そして狂ったように 彼は掘る 掘り進む そのとき 岩や瓦礫が落ちてきた この愚か者の上に はげしい哄笑が響いた 崩れた墓穴の中より 天使の歌は消えていった 悲しげに空の中へと |
シューマンには「ロマンスとバラード」と銘打った歌曲集が全部で4つあります。確かに「バラード(歌物語)」といえる作品がこの中に多く集められてはいますが、この歌曲集以外でもバラードと呼べる作品はいくつもありますし、逆にこの歌曲集の中にあってもバラードでない普通の抒情歌のようなものも目に付きます。
第1集の3曲はすべて1840年、作曲者歌の年の作品です。うち2曲がアイヒェンドルフの詩によるもので、この人の詩によるバラードというのはけっこう珍しいように思います。この第1曲など、シニカルな寓意に満ちた物語展開はゲーテの書いたバラードを連想させて興味深いところ。この男が何の象徴なのかは皆様ぜひとも考えてみてください。
シューマンのバラードは、レーヴェのもののようにドラマティックで聞かせ上手な血湧き肉踊るようなものではないですが、緻密に情景を描写していてじっくり聴き込むと手ごたえがしっかりとあります。この歌も天使の静けさと、欲望でぎらぎらした男との対比が実に見事。最後は悲劇的な結末ではありますがなぜだか微笑ましくさえ感じてしまいます。
( 2010.11.20 藤井宏行 )