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かきつばた    
  AIYANの歌
 
    

詩: 北原白秋 (Kitahara Hakusyuu,1885-1942) 日本
    思ひ出 (1911)  かきつばた

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本   歌詞言語: 日本語


柳河の
古きながれのかきつばた
晝はONGOの手にかをり、
夜は萎(しを)れて
三味線の
細い吐息(といき)に泣きあかす。
(鳰(ケエツグリ)のあたまに火が點(つ) いた、.
 潜(す)んだと思ふたらちよいと消えた。)



ONGOは「おなご」の訛りでしょうか。柳川の方言で良家の娘のことなのだそうです。美しいかきつばたの花は、昼間こそお嬢様の手に持たれて香り立たんばかりですが、夜になると萎れてもうなすすべもない、私が得たイメージは零落して遊女になってしまったお城様の姿です。山田耕筰のつけたメロディはユーモアすら漂わせる軽妙なものなので、そういう悲惨さは感じさせないのですが、逆にそういう悲惨な境遇を笑い飛ばしているようなしたたかさを表そうとしているのかも知れません。最後のケエツグリ…の部分は民謡の囃し言葉のような感じがします。「かえるが鳴くからかえろ」のわらべ歌のようにその前までのメロディに関係なくさらっと歌われて曲を閉じます。ケエツグリとはカイツブリという水鳥の柳川訛り。水の上から潜って消えてしまう姿をこう描写しているのでしょうか。

( 2010.11.07 藤井宏行 )


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