蟹味噌 |
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どうせ、泣かすなら ピリリとござれ 酒は地の酒 蟹(がね)の味噌 臼で蟹搗(がねつ)き 南蠻辛子 どうせ、蟹味噌(がねみそ) ぬしや辛い 酒の肴(さかな)に 蟹味噌?(か)ませ 泣えてくれんの 死んでくれ |
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これも「日本の笛」の中に収録されている詩で、白秋の故郷、筑後柳川あたりを題材としています。先日取り上げた深井史郎が曲をつけた「矢部のやん七」も同じセクションに入れられています。
この蟹(がね)味噌、普通に言うところの蟹の内臓、すなわちカニミソではなくて、この地方の珍味、蟹を丸ごとすりつぶして唐辛子であえたもの(詩の第2節に作り方が書かれていますね)なのだそうです。
作り方を聞くだに、酒の肴にピッタリそうですが、実際この歌でも肴として地酒をあおるのに食されていますね。しかも失恋のヤケ酒です...
どうせ泣くのならなくした恋のことで泣くのでなく、唐辛子の辛さで泣きたい、でも最後は未練で自暴自棄になってしまっています。ユーモラスな詩だと思うのですが耕筰の曲はけっこう悲壮な感じ。これはこれで面白いですが。この手の曲を歌わせたら天下一品のバリトン、立川澄人の名唱があります(EMI)。
( 2010.11.07 藤井宏行 )