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Home,Sweet Home    
 
我が家よ、なつかしき我が家  
    

詩: ペイン (John Howard Payne,1791-1852) アメリカ
      

曲: ビショップ (Henry Rowley Bishop,1786-1855) イギリス   歌詞言語: 英語


Mid pleasures and palaces though we may roam,
Be it ever so humble,there's no place like home;
A charm from the sky seems to hallow us there,
Which,seek through the world,is ne'er met with elsewhere.

 (Chorus:)
  Home,home,sweet,sweet home!  
  There's no place like home,oh,there's no place like home!


An exile from home,splendor dazzles in vain;
Oh,give me my lowly thatched cottage again!
The birds singing gayly,that come at my call
-- Give me them -- and the peace of mind,dearer than all!

 (Chorus:)
  Home,home,sweet,sweet home!  
  There's no place like home,oh,there's no place like home!


I gaze on the moon as I tread the drear wild,
And feel that my mother now thinks of her child,
As she looks on that moon from our own cottage door
Thro' the woodbine,whose fragrance shall cheer me no more.

 (Chorus:)
  Home,home,sweet,sweet home!  
  There's no place like home,oh,there's no place like home!


How sweet 'tis to sit 'neath a fond father's smile,
And the caress of a mother to soothe and beguile!
Let others delight mid new pleasures to roam,
But give me,oh,give me,the pleasures of home.

 (Chorus:)
  Home,home,sweet,sweet home!  
  There's no place like home,oh,there's no place like home!


To thee I'll return,overburdened with care;
The heart's dearest solace will smile on me there;
No more from that cottage again will I roam;
Be it ever so humble,there's no place like home.

 (Chorus:)
  Home,home,sweet,sweet home!  
  There's no place like home,oh,there's no place like home!

快楽の中にあっても われらがそぞろ歩く宮殿の中でも
どんなに粗末でも、我が家に勝るところはない
空より来たる魔法が われらをそこで清めるようだ
それは世界中を探そうとも、他のどこにも見つかりはしない

 (合唱)  
  我が家よ、我が家、なつかしき、なつかしき我が家!
  我が家に勝るところはない、おお、我が家に勝るところはないのだ


家を追われた者には、この輝きのまぶしさも空しく見えます
おお、私にあの粗末なわらぶきの家を返してください!
鳥たちは嬉しそうに歌っていました、私の呼びかけにやってきて
--彼らを返してください-- そして心の平安こそが、何よりも愛おしいのです!

 (合唱)  
  我が家よ、我が家、なつかしき、なつかしき我が家!
  我が家に勝るところはない、おお、我が家に勝るところはないのだ


私は月を見つめます 寂しい荒野を歩きながら
そして感じるのです 母は今 わが子のことを考えているのだろうと
あのわが家の戸口から月を見上げながら
スイカズラの茂みの間の戸口から、あの香りが私を元気付けることはもうないのでしょう

 (合唱)  
  我が家よ、我が家、なつかしき、なつかしき我が家!
  我が家に勝るところはない、おお、我が家に勝るところはないのだ


父のやさしい笑顔のもとに座っているのは何とすてきなことでしょう
そして母のなぐさめ なだめる愛撫のもとに
他の人たちには新しい喜びを味わわせてあげてください
でも私には、おお私には我が家の喜びを与えてください

 (合唱)  
  我が家よ、我が家、なつかしき、なつかしき我が家!
  我が家に勝るところはない、おお、我が家に勝るところはないのだ


あなたのもとへと私は戻りましょう、悩みでやつれ果てて
心からの最高に優しい癒しが私にそこでほほえむのでしょう
決してもうあの小屋より私はさまよい出たりはしません
どんなに粗末でも、我が家ほどの場所はないのだから

 (合唱)  
  我が家よ、我が家、なつかしき、なつかしき我が家!
  我が家に勝るところはない、おお、我が家に勝るところはないのだ


日本では里見義(ただし)のつけた歌詞「埴生(はにゅう)の宿」で明治の唱歌となり、かつては良く知られていた歌ですが、今はどうなのでしょうか。言葉があまりに古くなりましたので今の若者には知る人も少ないという状況かも知れません。知られなくなりつつあると言えば、この曲を効果的に使った物語「ビルマの竪琴」(竹山道雄)もかつては何度も映画化された作品でしたが、あの太平洋戦争のことが忘れられてきているのにつれてこちらもあまり話題にのぼらなくなってきているようにも思われます。
時の流れとは言いながら何とも無常なことではありましょうか。
さて、元歌のテーマとはまるで関連のない歌詞を嵌めて歌われたことの多かった明治の唱歌ではありましたが、この曲に関していえば元の詩と同じように「どれだけ粗末でも、自分の家が良いのだ」というテーマではあります。もっとも元歌では故郷を離れた者が懐かしんで歌うというのに対して、里見訳の方は今も暮らしているように読めるのではありますが...

もともとこの歌はイギリスのオペレッタ「クラーリ、またはミラノの乙女」(1823)の劇中歌、田舎出の娘クラーリが故郷を想って歌うアリアだったのだそうです。里見訳でいうところの「ああ我が宿よ」よりあとの部分は元はコーラスによって歌われていたようですが、今ではそのままソロで歌われることがほとんどです。作詞者のジョン・ハワード・ペインは何とアメリカの出身。役者として当時イギリスで活躍していました。
また作曲者のビショップは今やこの曲のみで名を残している感じではありますが、当時はこのオペレッタの成功で名声を得、後にはSirの称号を得たほどの人でした。


先日死去したイギリスのソプラノ、ジョーン・サザーランドが愛唱していたこの歌。彼女のいくつもの見事な録音があります。コロラトゥーラの至芸で鳴らした人でしたが、ここではしみじみと噛んで含めるような味わい深い歌声で痺れさせてくれます。

( 2010.10.22 藤井宏行 )


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