Blicke mir nicht in die Lieder Fünf nach Ruckert |
私の歌の中まで覗きこまないで 5つのリュッケルトの詩による歌曲 |
Blicke mir nicht in die Lieder! Meine Augen schlag’ ich nieder, Wie ertappt auf böser Tat; Selber darf ich nicht getrauen, Ihrem Wachsen zuzuschauen. Blicke mir nicht in die Lieder! Deine Neugier ist Verrat,ist Verrat! Bienen,wenn sie Zellen bauen, Lassen auch nicht zu sich schauen, Schauen selbst auch nicht zu. Wenn die reifen Honigwaben Sie zu Tag gefördert haben, Dann vor allen nasche du! Dann vor allen nasche du! Nasche du! |
私の歌の中まで覗きこまないで! 私の目は下を向いてしまう 悪いことを見つかった時のように 自分でもとてもできない この歌がどう育つのか見届けることなんて 私の歌の中まで覗きこまないで! あなたの好奇心は裏切りなのです、裏切り! ハチたちは、巣を作るときには 同じように見られないようにしますし 自分でも見ないようにするのです もしも豊かなハチミツいっぱいの巣が 太陽のもとへともたらされたときには あなたが一番最初にそれを味わえるのですから! あなたが一番最初にそれを味わえるのですから!味わえるのですから! |
マーラーは民謡詩や自作の詩など、あまり大詩人の書いた詩を歌曲にしようとはしませんでした。唯一この(大詩人かどうかは異論のある方もおられるようではありますが)、フリードリヒ・リュッケルトの詩につけた歌曲を11曲書いたものだけが本格的な詩人の手になる詩による歌曲ということになります。若き頃の饒舌なメロディには確かに民謡のような素朴なものの方が良く合っているということもありますが、そんな饒舌さが磨かれて穏やかになった後期においては、このリュッケルトの詩による歌曲もたいへん魅力的に響くようになりました。
もともとは「少年の不思議な角笛」より取られた「起床合図」と「少年鼓手」と合わせて「7つの歌」として出版された歌曲の中の5曲のリュッケルトの詩による歌曲は、特に一貫したテーマがある訳でもありませんし、楽譜によって曲順がまちまちであったりするため、演奏の際も様々な曲順で取り上げられます。ここでは最初の出版の際の順序とされるものに従いましたが、曲順の番号は付けないことにしました。
第1曲目はかつての角笛の歌曲を思わせるような素朴なメロディで、他の4曲とは一線を画しているような曲です。
( 2010.10.11 藤井宏行 )