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It was a lover and his lass    
 
恋に落ちた若者とその彼女  
    

詩: シェイクスピア (William Shakespeare,1564-1616) イングランド
    As You Like It (お気に召すまま) Act.5 Scene.3 It was a lover and his lass

曲: モーリー (Thomas Morley,1557-1602) イギリス   歌詞言語: 英語


It was a lover and his lass,
With a hey, and a ho, and a hey nonino
That o'er the green cornfields did pass.
In spring time, the only pretty ring time,
When birds do sing, hey ding a ding a ding;
Sweet lovers love the spring.

Between the acres of the rye,
With a hey, and a ho, and a hey nonino,
These pretty country folks would lie,
In spring time, the only pretty ring time,
When birds do sing, hey ding a ding a ding;
Sweet lovers love the spring.

This carol they began that hour,
With a hey, and a ho, and a hey nonino,
How that a life was but a flower
In spring time, the only pretty ring time,
When birds do sing, hey ding a ding a ding;
Sweet lovers love the spring.

Then, pretty lovers, take the time
With a hey, and a ho, and a hey nonino,
For love is crowned with the prime
In spring time, the only pretty ring time,
When birds do sing, hey ding a ding a ding;
Sweet lovers love the spring.

恋に落ちた若者が彼女と二人
ヘイ ホ ア ヘイ ノニノ
向こうのとうもろこし畑を歩いていく
春の盛りは指輪を交わす季節
鳥がさえずり、ヘイ、デイン、ディン、ディン
恋するふたりは春が好き

ライ麦畑の真ん中で
ヘイ ホ ア ヘイ ノニノ
仲良したちは寝そべっている
春の盛りは指輪を交わす季節
鳥がさえずり、ヘイ、デイン、ディン、ディン
恋するふたりは春が好き

やがてふたりは歌い出す
ヘイ ホ ア ヘイ ノニノ
人生なんてはかない花よ
春の盛りは指輪を交わす季節
鳥がさえずり、ヘイ、デイン、ディン、ディン
恋するふたりは春が好き

それなら今を楽しもう
ヘイ ホ ア ヘイ ノニノ
今を盛りの恋する時を
春の盛りは指輪を交わす季節
鳥がさえずり、ヘイ、デイン、ディン、ディン
恋するふたりは春が好き

日本の桜の季節にふさわしい情景と感覚ですが、これはシェイクスピアの喜劇「お気に召すまま」の終幕近く、不思議な力を持つアーデンの森の中で、3組の恋人達の結婚式がまさに行われようとしている直前に、2人の小姓によって歌われる劇中歌です。有名な詩なもので、シェイクスピア時代から現代まで数多くの作曲家が曲を付けていますが、やはりこの曲はシェイクスピアと同時代のイギリスの作曲家、トマス・モーリーの作品が一番印象的でしょうか。弾けるようなリズムと、快く響く「ヘイノニノ」や「デインガディンガデンン」という囃言葉、そして耳に優しい古楽器の響き、400年を経てなお生き延びているにふさわしい魅力を持った曲です。

快速なテンポですが端正に歌われているアルフレッド・デラー(カウンターテナー)のデラー・コンソート伴奏による録音(HMF)、逆にしっとりと情感深く歌われる佐藤豊彦のリュート他の伴奏で歌われる山田千代美のソプラノ(ChannelClassic)、あるいは14世紀の音楽とカップリングされて非常に古いスタイルが伝えられているフォルガー・コンソートのもの(歌手不明・テノール)など、歌手・伴奏・解釈の組み合わせが非常に多様なのがこの時代の歌曲の面白さですが(未聴ですが、今を時めくソプラノのバーバラ・ボニーの入れた盤もあるようです)、私が一番気に入っているのは、シェイクスピアゆかりの劇場「グローブ座」を復興しようとした「新グローブ座」の団員(楽士?)たちによる臨場感溢れる録音(Philips)です。この曲の舞台の設定通り、お小姓2人によるデュエット(ソプラノの清楚な声が少年のような魅力)、これにフィリップ・ピケット他のリコーダー他による生き生きとした伴奏が、この喜劇の大団円の喜びを盛り上げる素敵な音楽を聴かせて くれます。

( 2003.03.30 藤井宏行 )


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