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かっぱ    
 
 
    

詩: 谷川俊太郎 (Tanikawa Shuntarou,1931-) 日本
      

曲: 三善晃 (Miyoshi Akira,1933-2013) 日本   歌詞言語: 日本語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください


私は三善晃氏の声楽作品の良い聴き手ではありません。氏の器楽作品、ピアノ協奏曲をはじめとするピアノ作品や交響作品はその剃刀のような切れ味の鋭さが好きで、若い頃はよくLPやライブで聴いていたのですが、どうも合唱作品にはその切れ味が感じられず、捕らえどころのないもやっとした旋律とハーモニーが覆いかぶさっているだけのように聞こえてしまうものですから、いつしかそちら方面には手を出さなくなってしまいました。合唱をやっている方に言わせると、氏の作品の精緻に書かれたところは難しいけれど大変魅力的なのだそうですが、その意味では演奏効果を出すのが非常に難しく、聴衆に作品の魅力がなかなか伝わらない、というハンデがあるのかも知れません。そう言えば私が三善氏の合唱作品を聴いたのも全部アマチュアの合唱団だったしなあ...と最近思い至った次第。
それで、鮫島有美子さんの日本歌曲選集3、三木稔&橋本国彦作品に挟まれて、三善晃作品が十数曲収録されているのを見た時もちょっと及び腰ではあったのですが、畑中良輔詩の「超える影に」や萩原朔太郎詩の「抒情小曲集」はともかく(正直に言います。まだ良く良さが分かりません)、間に入った6曲ほどの子供のための歌曲は、子供向けに分かりやすく、簡単に書かれているということもあるのでしょう。非常に素敵だと思いました。
この「かっぱ」という曲、谷川氏の詩は「かっぱかっぱらった らっぱかっぱらった」という言葉遊びのフレーズで多くの方がご存知かと思いますが、三善氏はこれにマーラーの「子供の不思議な角笛」を思わせるようなマーチングスタイルの味のあるメロディを付けました。1分足らずのシンプルな曲なのですがピアノのきらめく伴奏といい、歌の弾み具合といい忘れがたく、同じ谷川作品に作曲の「なんのき」「ことこ」と共に非常に気に入ってしまいました。この作品、児童合唱のバージョンもあるようなので、マイ・三善晃ルネッサンスということで、三善晃の声楽作品を今年は振り返ってみるのも悪くないかな、と思っています。その意味で返す返す残念なのは、10年程前に出ていた瀬山詠子(Sop)・作曲者(pf)の三善晃歌曲集(Victor)を、上述のような食わず嫌いで買いそびれてしまっていることです。
歌曲のCD、とりわけ日本歌曲はよくよくのことがない限り復刻されないので、これは大失敗と言えるかも知れません。

( 2003.01.01 藤井宏行 )


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