Des Buben Schützenlied Op.79-25 Liederalbum für die Jugend |
少年の歌う狩人の歌 若者のための歌のアルバム |
Mit dem Pfeil,dem Bogen Durch Gebirg und Tal Kommt der Schütz gezogen Früh am Morgenstrahl. Wie im Reich der Lüfte König ist der Weih. - Durch Gebirg und Klüfte Herrscht der Schütze frei. Ihm gehört das Weite, Was sein Pfeil erreicht, Das ist seine Beute, Was da kreucht und fleugt. |
矢を 弓を手に 山々や谷間を抜けて 狩人がやってくるのさ まだ早い朝の光の中を 空の王国では 鷹が王様であるように 山々や谷間にあっては 狩人が気ままなご主人様さ この広がりは彼のものだ その矢が届く限り そこには彼の獲物がいる 這うものやら飛び跳ねるものが |
シラーの戯曲「ヴィルヘルム・テル」よりその第3幕の冒頭で、ヴィルヘルム・テルの息子ヴァルターによって歌われる歌です。このあとの第2場では有名なシーン、悪代官ゲスラーに命じられてテルが息子の頭に載せたリンゴを弓で射させられるところが出てくるのですが、その息子こそまさにここでこの歌を歌っているヴァルターです。このときはそんなことを彼は予想もしていなかったわけですが、何とも意味深長な伏線になっていますね。ここで歌われる狩人とはもちろん父親のヴィルヘルムのことでしょう。そのシーンで自らが的にさせられる時でも怖気づくことなく、ゲスラーに父親が的を外すはずなんかないと食ってかかっていますから、父親のことをとても尊敬し、信頼していることをこの場面でも描き出しているのだと思います。
角笛の響きを思わせる力強いメロディは小気味良く、とても魅力的。この戯曲のために書かれたのではありませんけれども、実際の舞台で使われても素晴らしい効果を挙げるのではないでしょうか。
タイトルですが「少年の狩人の歌」と訳されることが多いですが、これだと狩人が少年のように読めてしまうので、邪道ですが「歌う」という言葉を補わせて頂きました。
( 2010.09.10 藤井宏行 )