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Notte   P 97  
  Sei Liriche,seconda serie
夜  
     6つの抒情歌 第2集

詩: ネグリ (Ada Negri,1870-1945) イタリア
      

曲: レスピーギ (Ottorino Respighi,1879-1936) イタリア   歌詞言語: イタリア語


Sul giardino fantastico
Profumato di rosa
La carezza de l'ombra
     Posa.

Pure ha un pensiero e un palpito
La quiete suprema,
L'aria come per brivido
     Trema.

La luttuosa tenebra
Una storia di morte
Racconta alle cardenie
     Smorte?

Forse perché una pioggia
Di soavi rugiade
Entro i socchiusi petali
     Cade,

Su l'ascose miserie
E su l'ebbrezze perdute,
Sui muti sogni e l'ansie
     Mute.

Su le fugaci gioie
Che il disinganno infrange
La notte le sue lacrime
     Piange...

幻想の庭に
バラは香り
影の愛撫が
   たちこめています

けれどここにも思いと感動が
この気高き静けさにも
大気は震えるように
   揺れています

哀しみにくれた暗闇は
死の物語を
クチナシの花たちに語るのでしょうか
   この蒼ざめたものたちに?

たぶん雨の
甘いしずくが
半分閉じかけた花びらの上に
   滴っているのです

秘めた苦悩や
なくした喜びの上に
語らぬ夢や不安
   黙せしものの上に

逃げ去ってゆく喜び
幻滅が破壊せしものの上に
夜はその涙を
   注ぐのです


レスピーギの歌曲の中で、比較的目にすることの多い詩人のひとりがこの彼と同時代の女性詩人アーダ・ネグリ(Ada Negri (1870-1945) )です。彼の代表作と目される歌曲「霧」も彼女の詩につけたものですし、他にもこの曲をはじめ印象的なものばかりです。彼女の描き出す幻想的な情景描写がレスピーギの音楽ととてもよく合っているということがあるのでしょう。
この曲「夜」も両者の美質が見事に生かされたとても美しい作品です。
夜の闇の苦悩を描いているのではありますが、いわく言い難い陶酔感に溢れ、ピアノの初期ドビュッシーを思わせるメロディが美しくこの夜の闇を彩っています。
清楚なソプラノが歌うととても映える曲ですね。
松本美和子さんの歌うこの曲はテンポを思い切りゆっくり取って、幻想的な夜の感じを譬えようもなく美しく描きだしています。伴奏のスカレーラのピアノの響きも実に美しく、素晴らしい音楽が紡ぎ出されています。(Victor レスピーギ歌曲集)
もう少し淡々としていますが、ふくよかな声の美しさでこちらも印象的なのがヴェロニカ・キンチェシュの歌うHugaroton盤(伴奏:アニコ・スツァボ)。こちらも実に美しいレスピーギ歌曲集です。

( 2010.08.21 藤井宏行 )


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