Reiselied Op.34-6 6 Gesänge |
旅の歌 6つの歌 |
Der Herbstwind rüttelt die Bäume, Die Nacht ist feucht und kalt; Gehüllt im grauen Mantel Reite ich einsam,einsam im Wald. Und wie ich reite,so reiten Mir die Gedanken voraus; Sie tragen mich leicht und luftig Nach meiner Liebsten Haus. Die Hunde bellen,die Diener Erscheinen mit Kerzengeflirr; Die Wendeltreppe stürm' ich Hinauf mit Sporengeklirr. Im leuchtenden Teppich gemache, Da ist es so duftig und warm, Da harret meiner die Holde, Ich fliege in ihren Arm! Es säuselt der Wind in den Blättern, Es spricht der Eichenbaum: «Was willst Du,törichter Reiter, Mit Deinem törichten Traum?» |
秋の風が木々を揺らし 夜はじめっと寒い 灰色のマントに身を包み わたしはひとり、ただひとり森を馬で駆ける 馬が早駆けするように駆けていくのだ 私の心もずっと先へと 馬も心も私を連れて行く 軽やかに風のように 恋しい人の家へと 番犬が吠え、召し使いが ろうそくの明かりと共に現れるだろう 曲がりくねった階段を私は駆け上がる ガラガラ鳴る靴の拍車もそのままに 華やかな柄の絨毯の部屋の中 そこは香しく、暖かい そこに待つのは私の愛しい人 私は彼女の腕に飛び込むのだ 風は木の葉をざわめかせ 樫の木はこうささやく 「何を望んでいるのか?愚かな旅人よ お前の独りよがりな夢想の中で」 |
実にメンデルスゾーンらしい曲だと思います。あの劇音楽「真夏の夜の夢」のスケルツォを思わせるようなふわっとした軽やかな旋律が繰り返し繰り返し出てくるのですが、この旋律、独立のピアノ曲でも聴いたことがあるような気がしてなりません。ご存知の方があれば教えて下さい。
はやる心だけが恋人(と彼が思っているだけかも知れない)のところに先に飛んで行き、暖かく、優しく迎えてくれる夢想をしているところのひたすら甘く美しいメロディーが、また最後に現実に引き戻され、風のざわめくスケルツォに戻されるところなどは、シューベルトの傑作「冬の旅」にでも出てきそうな名シーン、これに限らず素敵な曲がたくさんあるのにメンデルスゾーンの歌曲集の録音ってどうしてこんなに少ないのだろうと考えさせられてしまいました。
私が聴いたのは、ペーター・シュライヤーが割と最近(1993)に録音したBerlin Classics盤ですが、この端正にして流麗な旋律の歌曲を実に見事に歌ってなかなか素晴らしいと思いました。
( 1999.10.10 藤井宏行 )