Wer hat dies Liedlein erdacht? Des Knaben Wunderhorn |
誰がこの小唄を思いついたの? 子供の不思議な角笛 |
Dort oben am Berg in dem hohen Haus! In dem Haus! Da gucket ein fein's lieb's Mädel heraus! Es ist nicht dort daheime! Es ist nicht dort daheime! Es ist des Wirts sein Töchterlein! Es wohnet auf grüner Heide! “Mein Herzle is' wundt, Komm' Schätzle mach's g'sund! Dein' schwarzbraune äuglein, die hab'n mich vertwund't! Dein rosiger Mund macht Herzen gesund. Macht Jugend verständig, macht Tote lebendig, macht Kranke gesund, macht Kranke gesund, ja gesund.” Wer hat denn das schön schöne Liedlein erdacht? Es haben's drei Gäns' über's Wasser gebracht! Zwei graue und eine weiße! Zwei graue und eine weiße! Und wer das Liedlein nicht singen kann, dem wollen sie es pfeifen! Ja- |
あそこの山の上の高い家の中! あの家の中! あそこできれいな愛らしい娘が顔を覗かせている あの子はあそこの家の子じゃない! あの子はあそこの家の子じゃない! あの子は宿屋の主人の娘! あの子は住んでる 緑の丘の上に! ぼくの心は傷ついた 来て 愛しい人よ 癒しておくれよ! きみの暗い茶色の瞳 そいつがぼくに傷を負わせたのさ! きみのバラ色のくちびるが 心を元気にしてくれる 若者を賢くしてくれる 死者を生き返らせてくれるし 病人を健康にもするんだ 病人を健康にもするんだ そう 健康にも ところで誰がこのきれいな きれいな歌を考えたのかって? 三羽のガチョウが水の上を運んできたのさ! 二羽は灰色で一羽は白! 二羽は灰色で一羽は白! そしてこの歌が歌えないやつには 彼ら 鳴き声で教えてくれるのさ! ああ- |
最初の宿屋の娘のことを歌っていた部分が唐突に求愛の歌に変わり、そして最後に今まで歌ったことが歌として作られたお話なんだよ、と二転三転して何やらチグハグな感じですが、実はマーラーが二つの別の詩をまぜこぜにして繋いでいるのでそうなっているところもあるのです。最初の宿屋の娘を描写した節のあとにはこんな内容が続きます。
そしてあの娘をモノにしたいやつは
何千ターラも貢がなきゃならない
おまけに誓わなきゃならないんだ
けっしてもうワインには手を出さないと
親父の財産を頂くためにはな
Und wer das Mädel haben will,
Muß tausend Thaler finden,
Und muß sich auch verschwören,
Nie mehr zu Wein zu gehn,
Des Vaters Gut verzehren.
そしてこの歌の最後の「誰がこの歌を作った」に続きますので、もとの詞はつれない娘への当てこすりなのですね。
この部分を除いて差し替えた歌詞は「ぼくの心は傷付いた...」と恋人の瞳やくちびるを褒め称える口説き文句ですが、これは「Wers Lieben erdacht(誰がそれを愛だと思うのか)」という別の詩(タイトルのerdachtだけ共通ですね)から取られたものです。少々長いのでこちらの訳は失礼させて頂きますが、マーラーが取り上げた部分を口説き文句の決め台詞にした少年に対し、娘は「あなたを受け入れたら、あたしのお母さんの牛の乳しぼりは誰がするの」とチグハグな答で返し、それを受けて歌い手が「この歌を作ったやつはこんなのが愛だと思ってるんだろう」と突き放してオチを付けるという、この詩集によくある皮肉たっぷりの詩でした。
音楽はマーラーらしい節回しのレントラー舞曲に乗せて、歌手はヴォカリーズを織り交ぜた技巧的な歌唱で答えて行きます。この歌曲集の中では軽めの曲ですが、けっこう印象に残ります。コロラトゥーラ系の人の歌うのがなかなか良い感じでしょうか。
(2010.07.18) 訳詞改訂 2012.08.14
この曲も新全集が従来の歌詞と大きく異なる部分はなさそうな感じです。訳詞再改訂
( 2012.08.31 藤井宏行 )