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Wenn mein Schatz Hochzeit macht    
  Lieder eines fahrenden Gesellen
ぼくの好きだった人が結婚式をあげるとき  
     さすらう若人の歌

詩: マーラー,グスタフ (Gustav Mahler,1860-1911) オーストリア
      

曲: マーラー,グスタフ (Gustav Mahler,1860-1911) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Wenn mein Schatz Hochzeit macht,
Fröhliche Hochzeit macht,
Hab' ich meinen traurigen Tag!
Geh' ich in mein Kämmerlein,
Dunkles Kämmerlein,
Weine,wein' um meinen Schatz,
Um meinen lieben Schatz!

Blümlein blau! Blümlein blau!
Verdorre nicht! Verdorre nicht!
Vöglein süss! Vöglein süss!
Du singst auf grüner Haide:
“Ach! wie ist die Welt so schön!
Ziküth! Ziküth! Ziküth!”

Singet nicht! Blühet nicht!
Lenz ist ja vorbei!
Alles Singen ist nun aus!
Des Abends,wenn ich schlafen geh',
Denk' ich an mein Leide!
An mein Leide!

ぼくの好きだった人が結婚式をあげるとき、
陽気な結婚式をあげるとき、
それはぼくの悲しみの日になるんだ!
ぼくは自分の部屋に行き 
暗い小部屋で
泣くんだ、泣くんだ、ぼくの好きだった人を思って
ぼくの愛した大切な人のことを思って!

青い花よ!青い花よ!
枯れるんじゃない!枯れるんじゃない!
かわいい小鳥よ!かわいい小鳥よ!
おまえは緑の茂みでこう歌っているんだな
「ああ、世界はなんて美しいんだろう!
ツィキュート!ツィキュート!ツィキュート!」って

歌うんじゃない!咲くんじゃない!
春は そう 終わりだ!
すべての歌声はもう消え去った!
夕暮れ、ぼくが眠りにつくとき、
ぼくは自分の悲しみのことを思うのだ。
ぼくの悲しみのことを!


マーラーの初期の傑作歌曲集として非常に良く知られた「さすらう若人の歌」。タイトルにあるドイツ語Geselleには職人(親方Meisterと見習いLehrlingの間)という意味もありますので、最近では「遍歴職人の歌」と訳されることも多くなってきました。こうすることで確かにシューベルトの「美しき水車小屋の娘」や「冬の旅」との関連がはっきりと見えてくるところもありますが、Geselleには同時に「若者」や「やつ」といった意味もあり、決して従来からの訳がまずいということでもないかと思います。
この作品の作曲は1883〜85年にかけて。初演はだいぶ遅れて1896年とのことで、この歌曲集と重なり合うメロディに満ち溢れている彼の交響曲第1番(初演1889年)よりはるかに遅いですが、作曲はこの交響曲作曲よりも少し前のことのようです。
もともとは6曲からなる歌曲集であった予定が(マーラーの書簡にそのような記述があるとのこと)、結局発表された歌曲集としては4曲となりました。その4曲がそれぞれ個性的で、インパクトあふれる曲に仕上がっていますので、確かに聴きごたえのある作品です。

第1曲目はもともと彼が好んで曲を付けていた民謡詩集「少年の不思議な角笛」にある”Wann mein Schatz(ぼくの好きだったひとが)”という詩を下敷にしています。マーラーが若干手を入れていますが、それほど極端に詩の内容が変わってしまっているわけではありません。この詩に触発されて残りの曲も書こうと思い立ったのではないかと想像をしますが、あくまで想像の域で確証はありません。
彼の好んで用いるカッコウのモチーフを織り込みながら、振られてしまった悲しみをしみじみと浸り込むように歌います。途中花と小鳥が出てくるところでは一瞬明るくなりますが、すぐにまた冒頭の悲しみに戻って静かに曲を終えます。

(2010.05.29)

コンサートで配布される対訳にお使い頂くことになりましたので、歌詞を歌われる通りに直し、それに合わせて訳詞の見直しも行いました。
生まれて初めて、自分の訳詞を眺めながら生のリサイタルを聴く機会に恵まれましたがなかなか不思議なものです。僭越ではありますが、なかなか良くできた訳詞だな、と思いながら(自分のやりたい通りに訳せているのですから当然ですが)美しい歌に聴き惚れておりました。

( 2011.05.03 藤井宏行 )


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