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The Golden Willow Tree    
  Old American Songs 2
ゴールデン・ウイロー・トゥリー号  
     古いアメリカの歌 U

詩: 英語の民謡 (Folksongs,-) 
      

曲: コープランド (Aaron Copland,1900-1990) アメリカ   歌詞言語: 英語


There was a little ship in South Amerikee,
Crying O the land that lies so low,
There was a little ship in South Amerikee,
She went by the name of the Golden Willow Tree,
As she sailed in the lowland lonesome low,
As she sailed in the lowland so low.

We hadn’t been a-sailin’more than two weeks or three,
Till we came in sight of the British Roverie,
As she sailed in the lowland lonesome low,
As she sailed in the lowland so low.

Up stepped a little carpenter boy,
Says “What will you give me for the ship that I’ll destroy?”
“I’ll give you gold or I’ll give thee,
I’ll give you gold or I’ll give thee,
The fairest of my daughters as she sails upon the sea,
If you’ll sink ’em in the lowland lonesome low,
If you’ll sink ’em in the land that lies so low.”

He turned upon his back and away swum he,
He swum till he came to the British Roverie,
He had a little instrument fitted for his use,
He bored nine holes and he bored them all at once.
He turned upon his breast and back swum he,
He swum till he came to the Golden Willow Tree.

“Captain,O Captain,come take me on board,
O Captain,O Captain,come take me on board,
And do unto me as good as your word
For I sank ’em in the lowland lonesome low,
I sank ’em in the lowland so low.”

“Oh no,I won’t take you on board,
Oh no,I won’t take you on board,
Nor do unto you as good as my word,
Though you sank ’em in the lowland lonesome low,
Though you sank ’em in the land that lies so low.”

“If it wasn’t for the love that I have for your men,
I’d do unto you as I done unto them,
I’d sink you in the lowland lonesome low,
I’d sink you in the lowland so low.”
He turned upon his head and down swum he,
He turned upon his head and down swum he,
He swum till he came to the bottom of the sea.
Sank himself in the lowland lonesome low,
Sank himself in the land that lies so low.

南部のアメリキーには一隻の小さな船があった
低地の海を唸りを上げて進んでた
南部のアメリキーには一隻の小さな船があった
船はゴールデン・ウイロー・トゥリー号の名前で通っていた
低地の寂しい低地の海を行くときには
低地の寂しい低地の海を行くときには

我々は二〜三週間以上の航海はできないだろう
イギリスの海賊船に見つかることなしに
低地の寂しい低地の海を行くときには
低地の寂しい低地の海を行くときには

若い船大工の少年が立ち上がって
こう言った「何を私にくださいますか、もしも海賊船を壊したならば?」
「わしはお前に黄金をあげよう、それともあげよう
 わしはお前に黄金をあげよう、それともあげよう
 わしの一番綺麗な娘を 船が海を行くときに
 もしもお前が海賊船を低地の寂しい低地の海に沈めるならば
 もしもお前が海賊船を低地の寂しい低地の海に沈めるならば」

彼は背中向けて泳ぎ去った
彼は泳いでイギリスの海賊船までたどり着いた
彼は、小さな工具を使うために身に付けていた
彼は九つの穴を開けた 穴を一度に開けた
彼は胸をターンして泳ぎ戻ってきた
彼は泳ぎ戻ってきた、ゴールデン・ウイロー・トゥリー号まで

「キャプテン、おおキャプテン、甲板に上げてください
 おおキャプテン、おおキャプテン、甲板に上げてください
 そして、あなたのおっしゃった通りにしてください
 私は海賊船を低地の寂しい低地の海に沈めたのですから
 私は海賊船を低地の寂しい低地の海に沈めたのです」

「いいや、わしはお前を甲板に上げてはやらぬ
 いいや、わしはお前を甲板に上げてはやらぬ
 わしの言った約束通りにもせぬ
 お前が海賊船を低地の寂しい低地の海に沈めたにしても
 お前が海賊船を低地の寂しい低地の海に沈めたにしても」

「もしも私があなたの部下たちに対して持っているような愛情がなかったならば
 私は海賊船にしたのと同じことをするのでしょうけど
 私はあなたを低地の寂しい低地の海に沈めるのでしょうけど
 私はあなたを低地の寂しい低地の海に沈めるのでしょうけど」
彼は頭をひるがえし底へと泳いでいった
彼は頭をひるがえし底へと泳いでいった
彼は泳いだ 海の底にたどり着くまで
自らを沈めたのだ 低地の寂しい低地の海に


タイトルを直訳して「金色の柳の木」と紹介されることが多いですが、詞をご覧頂ければこれは船の名前で柳の木とは全く関係もありませんことから、ここではタイトルを「ゴールデン・ウイロー・トゥリー号」と訳させて頂きました。結構古くからあるバラードなので、タイトルや歌詞にもかなりのバリエーションがあります。また付けられたメロディも様々です。 タイトルの様々なバリエーションの中では”The Golden Vanity(金色の虚栄号:これも船の名前です)”がブリティッシュ・フォークとして一番有名でしょうか。もとは17世紀に書かれたもので、ボブ・ディランとかピーター・ポール&マリーの歌った録音などもあるようです。またこのタイトルではベンジャミン・ブリテンが児童合唱曲として作曲(民謡の編曲?)したものもあります。こちらでは敵はイギリスの海賊船ではなくてスペインの軍艦となっています。
もう少し歴史を紐解いてみると、”The Sweet Trinity.”という名の船が、アメリカ探検などでも歴史に名を残しているエリザベス一世の寵臣として16世紀から17世紀にかけて活躍したサー・ウォルター・ローリー(Sir Walter Raleigh 1552?-1618)の乗っていた船の名前で、スペインともこの船は戦闘をしたのだそうで、この船名をタイトルにした歌が一番最初なのではないか、というような記述も見つけました。この歌に出てきているような酷薄な船長であったのかどうかは分かりませんが、この船長のモデルも彼だということになるでしょうか。
“the lowland lonesome low”というのはある種はやし言葉のようなもので深い意味はないのだと思います。”Lowland Sea”というのはイギリスとアイルランドの間の海峡にあたる海、あるいはオランダの沖合い(低地で知られたオランダは別名がこのローランドだったのだそうです。恐らくスペインと戦争をしたのもこの海でしょう)などと結びつけて語られることもあるようですが。

そういうわけで元々はイギリスのバラードで、後にそれがアメリカに渡ってこうして歌い継がれたということなのだと思います。ですからSouth Amerikeeとあってもこれはブラジルやアルゼンチンのある南米ではなく、アメリカ合衆国の南部ということになるのでしょう。コープランドの編曲した曲の副題でも”Anglo-American Ballad”となって念押しをしています。そうしてみると「海賊船」と私は訳していますが、実はこの敵船はイギリスの海軍の船で、アメリカの独立戦争のことに置き換えてイメージしているのかも知れません。
音楽は伴奏の力強い音の連打(バンジョーの響きをイメージしているのかも)に乗せて、歯切れ良い歌が歌われます。ピアノ伴奏よりも管弦楽の分厚い響きの方が雰囲気は合っているかも知れません。

( 2010.05.20 藤井宏行 )


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