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Svitezjanka   Op.7-3  
  Chetyre romansa
シフィテシの娘  
     4つのロマンス

詩: メイ (Lev Aleksandrovich Mei,1822-1862) ロシア
      Svitezjanka 原詩: Adam Mickiewicz ミツキィェーヴィチ

曲: リムスキー=コルサコフ (Nikolai Andreyevich Rimsky-Korsakov,1844-1908) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Paren’ prigozhij moj,
Paren’ krasivyj,kto ty?
Zachem nad Svitez’ju burlivoj
Brodish’ nenastnoj poroju?
Bros’sja k nam v volny
I budem kruzhit’sja vmeste po zybi
Khrustal’noj so mnoju.
Khochesh’,moj milyj,
I lastochkoj shibkoj
Budesh’ nad ozerom mchat’sja,
Ili krasivoj veseloju rybkoj
Tselyj den’ budesh’ ty v strujkakh pleskat’sja.
Noch’ju na lozhe volny serebristoj
Landishej my nabrosaem,
Sladko zadremlem pod sen’ju struistoj,
Divnye grezy uznaem!

あたしのきれいな若者
きれいな若者よ、あなたは誰?
どうして渦巻くシフィテジ湖の上を 
嵐の中にさまようの?
さあ身を投げて 私たちのいる波間へ
一緒にさざ波の中で回りましょう
清らかに あたしと共に
もし望むなら、いとしい人よ
矢のように飛ぶツバメとなって
湖の上を飛んだり
美しくて元気な魚になって
一日中しぶきを上げましょうか
夜には銀の波を寝床として
スズランを上に撒いて
甘きまどろみをさざ波のふとんの下で
素敵な夢をみましょう!


シフィテシというのは詩人ミツキェヴィッチの故郷の近くなのだそうですが、現在はベラルーシの西になるのだそうで、ポーランドからはだいぶ離れてしまっています。その昔リトアニアの領地となっていたときにロシアに攻め滅ぼされて皆殺しにされ、町の女たちは白い蕗の花となったという伝説があり、ミツキェヴィッチがバラードにしています。ご紹介したこちらの方の詩は同じシフィテシを題材としていますが詩人の別のバラードから。お話はこんな感じです。若い森の狩人が夜な夜な逢う不思議な娘。恋に落ちた狩人は娘に求愛し、永遠の愛を誓います。その心が変わり、誓いを破るならば必ず災いがあると言い残し娘はいつものように去って行きます。追いかけた狩人は湖のほとりで、湖面に浮かびあがる美しい女の幻影に惑わされ、誘われて思わず愛の言葉を口にしてしまいます。すると女は先ほど永遠の愛を誓った娘となり、誓いを守らなかった若者ともども湖の中へと消えてしまいました。その後も月夜の晩にはいつもふたつの影が現れているのです。
この詩は、ショパンのバラード第3番Op.47の下敷になったとも言われ、検索してみますといろいろ詳細な解説が見つかります。鈍い私の感受性ではショパンのこの健康的な音楽からはこの物語は感じ取ることはできませんでしたが、美しいピアノのメロディと共にそんな幻想の世界に思いを馳せてみるのも良いかも知れません。

リムスキー=コルサコフが曲を付けたレフ・メイの詩は、このバラードの中からちょうど真ん中ほど、湖から現れて若い狩人を誘惑する謎の女の言葉の部分をロシア語に訳している部分です。渦巻くピアノの伴奏は波立つ湖の描写でしょうか。その上に妖しくも美しい歌が響きます。
リムスキー=コルサコフは後にこの曲をソプラノ・テノールと合唱+オーケストラのカンタータとしたのだそうですが(Op.44)、残念ながら私はまだ聴く機会に恵まれてはおりません。テノールもいるところを見るとミツキェヴィッチのバラード全体をカンタータにしているのだと思われますので、とても興味深いところではありますが。

( 2010.04.15 藤井宏行 )


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