Nänie Op.82 |
哀悼歌(ネーニエ) |
Auch das Schöne muß sterben! Das Menschen und Götter bezwinget, Nicht die eherne Brust rührt es dem stygischen Zeus. Einmal nur erweichte die Liebe den Schattenbeherrscher, Und an der Schwelle noch,streng,rief er zurück sein Geschenk. Nicht stillt Aphrodite dem schönen Knaben die Wunde, Die in den zierlichen Leib grausam der Eber geritzt. Nicht errettet den göttlichen Held die unsterbliche Mutter, Wann er am skäischen Tor fallend sein Schicksal erfüllt. Aber sie steigt aus dem Meer mit allen Töchtern des Nereus, Und die Klage hebt an um den verherrlichten Sohn. Siehe! Da weinen die Götter,es weinen die Göttinnen alle, Daß das Schöne vergeht,daß das Vollkommene stirbt. Auch ein Klagelied zu sein im Mund der Geliebten ist herrlich; Denn das Gemeine geht klanglos zum Orkus hinab. |
美しき者とて滅びねばならぬ!、それこそが人々と神々を支配する掟 地獄のゼウスの青銅の心臓を動かすことはない かつてたった一度だけ 愛がその闇の主の心を溶かしたことはあったが 出口にたどり着かぬうちに、厳しくも、彼はその贈り物を取り返したのだ アフロディテさえも かの美しき少年の傷を癒すことはないであろう その華奢な体をかの猪が残酷に引き裂きしものを 神々の英雄をも その不死の母が救うことはなかったのだ スケイアの門にて倒れ、彼が死の運命を受け入れしときにも けれども彼女は海底よりネレウスの娘たちと共に上がり 偉大な息子のために嘆きの歌を歌ったのだ 見よ!神々が泣いている、女神たちも皆泣いている 美しきものが色あせることに 完全なるものも死にゆくことに 愛する者の口より出ずる嘆きの歌は素晴らしいものだ なぜなら凡人たちは音も立てずに冥界へと降りてゆくのだから |
ブラームスの溜息が出るばかりに美しい合唱曲、オーケストラの伴奏も付いて実に魅力的です。もともと彼の友人でもあった画家のフォイエルバッハが亡くなった追悼として1880年に書かれたものですが、諦観に満ちた詩とは裏腹に、明るさや力強ささえ感じさせるのがとても興味深いです。最後は「愛する者の口より出ずる嘆きの歌は素晴らしいものだ」の節を繰り返し、しっとりとした余韻を残して終わります。
シラーの詩のタイトルである「ネーニエ」とはラテン語で「哀悼」の意味だそうで、ここでも古代ローマではありませんが古代ギリシャの神話を3篇織り込んでいます。最初はオルフェウスが死んだ妻エウリディーチェを冥界から連れ戻そうとした大変有名な神話から、次は美の女神アフロディテが、キューピッドの矢を間違って受けてしまって愛することになった人間の美少年アドニスが、狩りのさなかにイノシシに殺されてしまったというお話、そして最後はアキレス腱の語源にもなった勇者アキレウス。不死身のはずの彼の唯一の弱点のかかとを戦で射られて命を失います。彼の母の女神テティスは海神ネレウスの娘なのだそうで、姉妹を引き連れて海から上がり嘆きの歌を歌ったということを描写しています。
( 2010.03.20 藤井宏行 )