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Jeanne d’Arc au bûcher   S.293  
 
火刑台の上のジャンヌ・ダルク  
    

詩: デュマ父 (Alexandre Dumas père,1802-1870) フランス
      Jeanne d’Arc au bûcher

曲: リスト (Franz Liszt,1811-1886) ハンガリー   歌詞言語: フランス語


Mon Dieu ! j’étais une bergère
Quand Vous m’avez prise au hameau
Pour chasser la race étrangère
Comme je chassais mon troupeau.

Dans la nuit de mon ignorance
Votre Esprit m’est venu chercher.
Je vais monter sur le bûcher,
Et pourtant j’ai sauvé la France.


Seigneur mon Dieu ! je suis heureuse
En sacrifice de m’offrir
Mais on la dit bien douloureuse
Cette mort que je vais souffrir.

Au dernier combat qui s’avance
Marcherai-je sans trébucher ?
Je vais monter sur le bûcher,
Et pourtant j’ai sauvé la France.


Allez me chercher ma bannière
Où pour la victoire bénis,
De Jésus Christ et de sa mère
Les deux saints noms sont réunis.

Allez me chercher ma bannière ;
Sur ce symbole d’espérance
Mon oeil mourant veut s’attacher.
Je vais monter sur le bûcher,
Et pourtant j’ai sauvé la France.

私の神様!私はただの羊飼いの娘でした
あなた様が私をこの村よりお導きになられたときには
異国の敵を追い払いなさいと
それまで私が羊の群れを追い立てていたのと同じように

私の無知の夜の中から
あなた様の精霊は私を探し出しました
私は処刑台の上にかけられるでしょう
このフランスを救ってきたというのに


主なる私の神様!私は幸せです
生贄となる定めを私にお授け下さって
それはとても苦しいことだと人は言います
私が受けることになる死は

きたるべき最後の戦いで
私はよろめくことなく歩けるのでしょうか?
私は処刑台の上にかけられるでしょう
このフランスを救ってきたというのに


私の旗を見つけてきてください
勝利に祝福され
イエス・キリストとその母の
ふたつの聖なる御名が共にある旗を

私の旗を見つけてきてください
希望の印のある旗を
死ぬときにも私はそれを見つめていたいから
私は処刑台の上にかけられるでしょう
このフランスを救ってきたというのに


フランツ・リストは多彩な声楽作品を書いていますが、その中でもこれはかなり興味深いものです。15世紀・英仏百年戦争で活躍した少女ジャンヌ・ダルクを題材としていますが、彼女が捕えられ、そして宗教的な異端者として火あぶりにされる直前のモノローグを静かに、しかし非常な緊迫感をもって描き出しています。もともとオペラの一節として書かれたようですが、結局単独の歌曲となりました。彼がパリに滞在していた1845年の作品なのだそうですけれども、のちに改訂されて管弦楽の伴奏も付き、かなり晩年近い1874年の作品として作品番号が付けられています。残念なことにリストの作品の中でも知られざる曲となっているような感じで、なかなか取り上げられることはなく、私も管弦楽伴奏の版は聴いたことがありません。
詞はフランスの文豪アレクサンドル・デュマ、親子が同名で共に有名な人ですが、この詩は「三銃士」や「モンテ・クリスト伯」で知られた父の方の作のようです。

( 2010.03.01 藤井宏行 )


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