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Verlust    
  12 Lieder
なくしたもの  
     弟フェリックスの12の歌 Op.9に収録

詩: ハイネ (Heinrich Heine,1797-1856) ドイツ
    Buch der Lieder - Lyrisches Intermezzo(歌の本-抒情小曲集 1827) 22 Und wüßten's die Blumen,die kleinen

曲: ヘンゼル=メンデルスゾーン (Fanny Hensel-Mendelssohn,1805-1847) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Und wüßten's die Blumen,die kleinen,
Wie tief verwundet mein Herz,
Sie würden mit mir weinen,
Zu heilen meinen Schmerz.

Und wüßten's die Nachtigallen,
Wie ich so traurig und krank,
Sie ließen fröhlich erschallen
Erquickenden Gesang.

Und wüßten sie mein Wehe,
Die goldnen Sternelein,
Sie kämen aus ihrer Höhe,
Und sprächen Trost mir ein.

Die alle können's nicht wissen,
Nur einer kennt meinen Schmerz;
Er hat ja selbst zerrissen,
Zerrissen mir das Herz.

もしもあの花たち、小さなものが知ってくれるのなら
どれほど深く私のハートが傷ついたのかを
花たちは私と一緒に泣いてくれるでしょうに
私の痛みを癒そうと

もしもナイチンゲールたちが知ってくれるのなら
どれほど私が悲しみ 病んでいるのかを
鳥たちは明るく響かせてくれるのでしょうに
この気持ちをなごませる歌声を

もしも彼らが私の嘆きを知ってくれるのなら
金色の小さな星たちが
彼らはその高みから降りてきて
私を慰めようと話しかけてくれるのでしょうに

でもみんな知ることなどできないわ
たったひとりの人だけが私の苦しみを知っているの
だってあの人が引き裂いたのよ
引き裂いたのよ 私のこの心を


シューマンの歌曲集「詩人の恋」の中にも取り上げられているハイネの有名な詩です。あちらのせわしなささえも感じさせるような快速ぶりに比べると、こちらはもう少し流麗な感じ。弟フェリックスの作風に非常に良く似ているようにも思えますが、それはひとつにはまだ彼女も若い頃の作品で、弟と同じ師匠の影響が共にあったのではないかということ、そしてもうひとつはこの曲、弟の歌曲集の中の1曲として出版されていますので、どうしても似た雰囲気の作品が選ばれてしまうといったこともあるのではないか、といったことを邪推してしまいます。それともうひとつ興味深いのは、4節目の「あの人」にEr(彼)を使っているということです。フェリックスが出版したときからそうだったのかは確認できていないのですが、ファニーは女性の立場からこの詩を読み替えていたのですね。もっぱら女声で歌われる曲ですので、今ではハイネの原詩ではなくて「彼」で歌われることがもっぱらのようです。それもありまして訳詞は女の人のモノローグっぽくしてみました。

( 2010.02.12 藤井宏行 )


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