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Die Mohrenfürst auf der Messe   Op.97-3  
  Drei Balladen
歳の市のムーア人の王  
     3つのバラード

詩: フライリヒラート (Ferdinand von Freiligrath,1810-1876) ドイツ
      Die Mohrenfürst auf der Messe

曲: レーヴェ (Johann Carl Gottfried Loewe,1796-1869) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Auf der Messe,da zieht es,da stürmt es hinan
Zum Cirkus,zum glatten,geebneten Plan.
Es schmettern Trompeten,das Becken klingt,
Dumpf wirbelt die Trommel,Bajazzo springt.

Herbei,herbei! das tobt und drängt;
Die Reiter fliegen; die Bahn durchsprengt
Der Türkenrapp' und der Brittenfuchs;
Die Weiber zeigen den üppigen Wuchs.

Und an der Reitbahn verschleiertem Tor
Steht ernst ein krausgelockter Mohr;
Die türkische Trommel schlägt er laut,
Auf der Trommel liegt eine Löwenhaut.

Er sieht nicht der Reiter zierlichen Schwung,
Er sieht nicht der Roße gewagten Sprung.
Mit starrem,trockenem Auge schaut
Der Mohr auf die zotige Löwenhaut.

Er denkt an den fernen,fernen Niger,
Und daß er gejagt den Löwen und Tiger;
Und daß er geschwungen im Kampfe das Schwert,
Und daß er nimmer zum Lager gekehrt;

Und daß Sie Blumen für ihn gepflückt;
Und daß Sie das Haar mit Perlen geschmückt -
Sein Auge ward naß,mit dumpfem Klang
Schlug er das Fell,das rasselnd zersprang.

歳の市では、人はひしめき、嵐のように押し寄せる
サーカスへ、滑らかにならされた舞台へと
トランペットが響き、シンバルが鳴る
ドラムが鈍く打ち鳴らされ、ピエロが飛び跳ねる

こっちへどうぞ、こっちへどうぞ!とはしゃぎまわりひしめき合う
馬乗りたちは飛びはね、花道を駆け抜ける
トルコの黒馬やイギリスの栗毛馬
女たちは豊満な体を見せつける

そしてサーカスの布でできた戸口のところに
沈んで立っているのは縮れ髪のムーア人
トルコのドラムを激しく打ち鳴らしている
ドラムの上にはライオンの皮が張られてる

彼は見ない 馬乗りたちの優美な動きを
彼は見ない 馬たちの大胆な跳躍を
じっと動かない冷めた目で見つめてる
ムーア人はライオンの皮を

彼は考えている はるか はるかなニジェールを
そこで彼がライオンやトラを狩ったことを
そこで戦いに剣を振るったことを
そして二度と宿営地には戻らなかったことを

そして彼女が彼のために花を摘んでくれたことを
彼女が髪を真珠で飾ったことを
彼の瞳はうるみ、鈍い音と共に
彼は皮を打ち続けた、破れんばかりに


カール・レーヴェの作品97はいずれもフライリヒラートの詩による3部作で、ある黒人の王の悲劇を描いています。第1曲では妻に別れを告げて戦いに出て行く姿、そして第2曲は待っている妻のもとに敗れたという悲報がもたらされる情景。そして第3曲がここにご紹介したように、ヨーロッパに奴隷として売られ、見世物小屋の客引きの太鼓叩きをさせられている姿です。
全曲まとめて紹介されることはまれで、もっぱらこの第3曲だけが取り上げられることが多いようですが、ドラマティックな音楽と深みのある描写でなかなか印象的な音楽です。冒頭の年の瀬のにぎわいを描きだす激しいピアノの叩きつける響きが、孤独に立って悲しみを耐えている彼を描く静かなメロディと掛け合いながら展開していくのは見事。
詩人のフライリヒラートは若い頃には社会派として、こんな奴隷制度の問題などを告発する激しい詩を書いていたのだそうです。それを音楽で表現したレーヴェもなかなかやりますね。1844年の出版ということですのでレーヴェ壮年期の力作だと思います。

( 2010.01.23 藤井宏行 )


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