Urians Reise um die Welt Op.52-1 Acht Lieder |
ウリアンの世界旅行 8つの歌 |
Wenn jemand eine Reise tut, So kann er was verzählen. D’rum nahm ich meinen Stock und Hut Und tät das Reisen wählen. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Zuerst ging’s an den Nordpol hin; Da war es kalt bei Ehre! Da dacht’ ich denn in meinem Sinn, Das es hier beßer wäre. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! In Grönland freuten sie sich sehr, Mich ihres Ort’s zu sehen, Und setzten mir den Trankrug her: Ich ließ ihn aber stehen. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Die Eskimos sind wild und groß, Zu allen Guten träge: Da schalt ich Einen einen Kloß Und kriegte viele Schlänge. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Nun war ich in Amerika! Da sagt ich zu mir: Lieber! Nordwestpassage ist doch da, Mach’ dich einmal darüber. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Flugs ich an Bord und aus in’s Meer, Den Tubus festgebunden, Und suchte sie die Kreuz und Quer Und hab’ sie nicht gefunden. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Von hier ging ich nach Mexico - Ist weiter als nach Bremen - Da,dacht’ ich,liegt das Gold wie Stroh; Du sollst’n Sack voll nehmen. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Allein,allein,allein,allein, Wie kann ein Mensch sich trügen! Ich fand da nichts als Sand und Stein, Und ließ den Sack da liegen. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! D’rauf kauft’ ich etwas kalte Kost Und Kieler Sprott und Kuchen Und setzte mich auf Extrapost, Land Asia zu besuchen. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Der Mogul ist ein großer Mann Und gnädig über Massen Und klug; er war itzt eben dran, ‘n Zahn auszieh’n zu lassen. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Hm! dacht’ ich,der hat Zähnepein, Bei aller Größ’ und Gaben! Was hilfts denn auch noch Mogul sein? Die kann man so wohl haben! Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Ich gab dem Wirt mein Ehrenwort, Ihn nächstens zu bezahlen; Und damit reist’ ich weiter fort, Nach China und Bengalen. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Nach Java und nach Otaheit Und Afrika nicht minder; Und sah bei der Gelegenheit Viel Städt’ und Menschenkinder. Da hat er gar nicht übel drum getan, Verzähl’ er doch weiter,Herr Urian! Und fand es überall wie hier, Fand überall ‘n Sparren, Die Menschen grade so wie wir, Und eben solche Narren. Da hat er übel,übel dran getan, Verzähl’ er nicht weiter,Herr Urian! |
人が旅に出かけるときには たくさんの土産話ができるもの そこでおいらも杖と帽子を取って 旅行としゃれこんだのさ そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! 初めにゃあ北極に行ったのさ そこは恐ろしく寒いとこだったなあ だからおいらも頭ん中で考えたのさ お国の方がずっとマシだってなあ そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! グリーンランドじゃあ、みんな大歓迎さ おいらがそこを観光するのをさ そしておいらに脂っこい飲み物を勧めてくれた だけどおいらはそれにゃ指一本さわらずにきたぜ そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! エスキモーのやつらは野蛮ででっけえ すべてのことに品がねえ そこでおいらがひとりを馬鹿にしたもんだから 一杯ゲンコを食らっちまったぜ. そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! さて今度はアメリカだ そこでおいらは自分につぶやいた「悪くねえ」と 北西航路はまだあったから お前も一度乗ってみるがいいさ そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! おいらは船に乗り、海に繰り出した 望遠鏡をしっかり手に持って 陸地をあちこち探し回ったが 見つけることはできなかった そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! そこからおいらはメキシコに行った そこはブレーメンよりもずっと広いとこさ それでおいらは考えた、黄金も麦わらみたいにたくさん落ちてるんじゃないかと お前も大袋を持っていくがいいさ そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! しかし、しかし、しかし、しかし これほどの大嘘があるもんか! おいらは砂と石のほか何も見つけられなかった だから大袋なんかほっぽっちまえ そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! そこでおいらは冷たい食事を買った キールのニシンとケーキも そして速達便に乗って アジアの地を訪れたんだ そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! ムガール皇帝は大男だったが 民衆には優しかったし 利口だったんだが、彼はそのときひどく落ち込んでた 歯を抜かなくちゃならなかったから そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! ふうむ、おいらは考えた、歯痛なんだなと どんなに偉くて金持ちでも ムガール皇帝でも何てことぁねえなあ そんなもんを持ってるんじゃたまんねえなあ と そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! おいらは約束したのさ 宿の主人に 次の機会に払うからって そして旅を続けたのさ 中国やベンガルの方へ そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! ジャワやタヒチも それにアフリカまでも この機会に見ておいたのだ たくさんの町と人々を そいつはイイ話じゃねえか もっとたくさん話してくれや、ウリアンさんよ! そして分かった みなここと変わらないと 分かったのだ そこらじゅう変なやつばかりだと 人々はここと変わらないから そんな阿呆もいるもんさ そいつぁひでえ、ひでえ話だなあ もう二度と話すんじゃねえぞ、ウリアンさんよ |
ベートーヴェンの歌曲集作品52は出版が遅かったためにこのような大きな作品番号になってはおりますが、実際にはそのうちのいくつかは彼が20代のはじめに書いたものです。それもあってかこの歌曲集、いろいろなスタイルのごった煮歌曲集となっている感もありますが、その中でも詩・音楽ともに最も異色なのはこの曲でしょう。歌曲と銘打ちながら、最後2行のリフレインはウリアンの話を受けてどよめく聴衆の言葉ということで、ヘルマン・プライの歌ったもののように演奏によってはここを合唱にしていることもあります。合唱付きで聴くと18世紀の酒場の雰囲気が濃厚で大変に面白く聴けます。最後まで淡々と歌われているのが少々ヘンな感じはしますけれども...
一部現代においては取り上げるのが憚られるような内容のところもありますが、皆様の寛大なお心に期待してそのまま訳すことにしました。いくつかの固有名詞で意味が分からないものもありましたので誤訳は必ずあるものと思いますがどうぞご容赦ください。
世界旅行ということで一応世界を西回りで一周しています。残念ながら日本は登場しませんが、北極→グリーンランド→アメリカ→メキシコ→インド(ムガール)→中国・ジャワ・タヒチ等々...
一部位置関係がメチャクチャですけれども、当時のヨーロッパ人の世界認識はまあこんなものだったのでしょう。
ウリアンさん(Herr Urian)というのは辞書によれば「招かれざるゲスト」の意味もあるのだそうで、この曲も最後はそんなオチで終わっています。最後の節はけっこう哲学的なことは言ってると思うのですけれどもね。むしろそれより前の完全に荒唐無稽な話の方が一般大衆には受けが良いのだという詩人クラウジウスの皮肉でしょうか。興味深いところです。
( 2010.01.09 藤井宏行 )