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Fantazija    
  Proshchanije S. Peterburgom
ファンタジヤ  
     ペテルスブルグよさようなら

詩: クーコリニク (Nestor Vasil'yevich Kukol'nik,1809-1868) ロシア
      Фантазия

曲: グリンカ (Michael Glinka,1804-1857) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Stoj,moj vernyj,burnyj kon’,
u kryl’tsa chuzhogo,
i zemli syroj ne tron’
srebrjanoj podkovoj.

Ja,kak ten,proniknu v dom,
lozhe ikh otkroju,
usyplju ikh vechnym snom,
smert’ju uspokoju.

Vot togda nesi menja
na utes vysokyj,
i s utesa i s sebja
bros’ v Khenil glubokij.

Khenil shumit i zhertvy zhdet,
no deva gorja ne gadaet,
i mavra junogo lobzaet
i mavru junomu poet:

“Bros’,moj drug,slova,k chemu
kljatvy,obeshchan’ja?
S zharkikh ust tvoikh ljublju
pit’ odni lobzan’ja.

O,zachem vsju zhizn’ moju,
milyj,ne mogu ja
szhat’ v lobzanija struju,
v plamja potseluja!`”

Sbylos’!... Tri kedra nad mogiloj
brosajut ten’ na tri luny;
tri raznotsvetnye chalmy
kachaet vetr unylo.

Krugom ravnina grustno spit,
lish’ v svezhyj dern mogily novoj
kon’ andaluzkyj,kon stuchit
serebrjanoj podkovoj.

止まれ 我が忠実な駿馬よ
あの異邦人の家の戸口のそばに
地面に叩きつけるのではないぞ
お前の銀の蹄鉄を

影のように私はその家に忍び込み
ベッドを引きはがす
やつに永遠の眠りをくらわすのだ
死の休息を

そうしたら私を連れて行くがいい
あの急な断崖に
そしてあの崖から
ヘニルの淵へと振り落としてくれ

ヘニル川はざわめいて 生贄を待っている
だがあの乙女は悲しみなど思いもよらぬ
若いムーア人にくちづけて
若いムーア人に歌を歌う

「ねえ、わたしの愛しい人、言葉はいらないわ
 誓いや約束が何だというの?
 わたしはあなたの熱い口から
 くちづけだけを飲み干したいの

 ああ、どうしてわたしの命のすべてを
 愛しい人、私にはできないのでしょう
 このほとばしるくちづけの中に
 このくちづけの炎の中に込めることが!」

その通りになった! 三本の杉が墓の上に
三つの月影を投げかけている
三つの色とりどりのターバンが
風に悲しげに揺れている

まわりの平原は悲しげに眠り
ただ 建ったばかりの墓の新しい芝生の上で
アンダルシアの馬が、馬が踏みならすだけだ
その銀の蹄鉄を


第3曲に引き続き、再びスペインを舞台としたドロドロの情熱劇が出て参ります。ちょっと話の展開についていけず、訳がぐちゃぐちゃになってしまいましたがご容赦のほどお願い致します。あの異邦人、とあるのは中ほどに出てくる「若いムーア人」のことでしょうか? そいつを暗殺して自らはヘニル川に身を投げる、とありますが彼が恐らくこの異邦人を殺すきっかけとなったと思われる乙女はそのときなぜか彼と逢引中、と思うと場面はいきなり夜の墓のシーンへと変わり寂しく曲を閉じます。まさにこの目くるめく変わる情景こそがタイトルを「ファンタジヤ」としている理由なのでしょうか。
冒頭は緊迫感あふれる激しいリズム。馬の蹄の響きでしょうか。ところが中間部の乙女のモノローグはこの上もない甘美な愛の歌です。それがふっと途切れると、最後には重々しく、しかしどこか突き放した表情で寂しい墓地の様子が歌われて曲を閉じます。

( 2009.12.18 藤井宏行 )


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