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Der Engel   WWV 91  
  Wesendonck-Lieder
天使  
     マチルデ・ヴェーゼンドンクの詩による歌曲集

詩: ヴェーゼンドンク (Mathilde Wesendonck,1828-1902) ドイツ
      

曲: ヴァーグナー (Richard Wagner,1813-1883) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


In der Kindheit frühen Tagen
hört ich oft von Engeln sagen,
die des Himmels hehre Wonne
tauschen mit der Erdensonne,

daß,wo bang ein Herz in Sorgen
schmachtet vor der Welt verborgen,
daß,wo still es will verbluten,
und vergehn in Tränenfluten,

daß,wo brünstig sein Gebet
einzig um Erlösung fleht,
da der Engel niederschwebt,
und es sanft gen Himmel hebt.

Ja,es stieg auch mir ein Engel nieder,
und auf leuchtendem Gefieder
führt er,ferne jedem Schmerz,
meinen Geist nun himmelwärts!

子供の頃の昔の日々に
私は何度も天使たちのお話を聞いたものだった
彼らは天国の至上の喜びを
取り替えるのだという 地上の太陽と

そして、心が悲しみにあえぎ
この世から隠されて苦しむとき
そして、心が静かに血を流し
あふれる涙の中で死にゆくとき

そして、その祈りが熱烈に
ただ救いを願うときには
そこに天使が降り来て
心は静かに天に運び上げられるのだと

そう、私にもひとりの天使が降り来て
そして輝く翼の上に乗せ
彼は運んでゆく あらゆる痛みより遠く
私の精神を 今 天へと向かって


マチルデ・ヴェーゼンドンクの詩による歌曲集は1857年、ちょうど彼が大作「トリスタンとイゾルデ」に取り組んでいる最中に書かれました。第3曲「温室」と第5曲「夢」には「トリスタンとイゾルデのための習作」というタイトルが付けられ、あの楽劇の雰囲気を彷彿とさせる音楽(私には聴き分けられないのですが、楽劇の動機の原型となるものも織り込まれているのだそうです)が出来上がりました。のちに指揮者のフェリックス・モットルにより伴奏が管弦楽編曲されましたので、しばしばイゾルデなどの役を歌うドラマチック・ソプラノによってオーケストラコンサートで歌われたりもします。

マチルデ・ヴェーゼンドンクはワーグナーの熱烈な信奉者で彼を金銭的にも援助していた実業家オットーの妻で、しかもちょうどこの歌曲集を書いた時期にはワーグナーとの間で愛人関係になっていたのだといいます。そのあたりの個人的な事情もこの歌曲集の誕生に一役買っていたのは間違いなさそうですが、この手の作品によくありがちな秘められた恋の仄めかしのようなものはあまり感じられない(いくつかそのような解釈をしているものを見たことはありますが、ちょっと牽強付会に過ぎるように私には感じられました)もう少し幅広く人生の悩みや苦悩を取り上げている作品です。

第1曲目は透明な弦に導かれ、静かに淡々と天国への憧れが歌われます。ワーグナーの楽劇「ローエングリン」の第一幕への前奏曲を思わせるような澄み切った音楽です。

(2010.03.12)

2012.08.11 訳詞改訂致しました。

( 2012.08.11 藤井宏行 )


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