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La mort d'Ophélie   Op.18-2  
  Tristia
オフィーリアの死:バラード  
     トリスティア

詩: ラグヴェ (Ernest-Wilfrid Legouvé,1807-1903) フランス
      La mort d'Ophélie

曲: ベルリオーズ (Louis Hector Berlioz,1803-1869) フランス   歌詞言語: フランス語


Auprès d'un torrent,Ophélie
Cueillait tout en suivant le bord,
Dans sa douce et tendre folie,
Des pervenches,des boutons d'or,
Des iris aux couleurs d'opale,
Et de ces fleurs d'un rose pâle,
Qu'on appelle des doigts de mort.

Puis élevant sur ses mains blanches
Les riants trésors du matin,
Elle les suspendait aux branches,
Aux branches d'un saule voisin;
Mais,trop faible,le rameau plie,
Se brise,et la pauvre Ophélie
Tombe,sa guirlande à la main.

Quelques instants,sa robe enflée
La tint encor sur le courant,
Et comme une voile gonflée,
Elle flottait toujours,chantant,
Chantant quelque vieille ballade,
Chantant ainsi qu'une naïade
Née au milieu de ce torrent.

Mais cette étrange mélodie
Passa rapide comme un son;
Par les flots la robe alourdie
Bientôt dans l'abîme profond;
Entraïna la pauvre insensée,
Laissant à peine commencée
Sa mélodieuse chanson.

小川のそばで オフィーリアは
摘んでまわる 流れに沿いながら
自分の甘く優しい狂気に駆られて
ツルニチニチソウを ヒナギクを
オパールの色をしたアイリスを 
それから蒼ざめたバラ色をした花たちを
この花は死者の指と呼ばれているのだが

それから彼女の白い手の上に持ち上げる
朝の微笑みの宝物を
彼女はそれを枝から吊るす
近くの柳の木の枝に
けれどあまりに弱い小枝はしなり
折れる、哀れなオフィーリアは
水にはまる、彼女の花輪を手に

しばらくはドレスが膨らみ
流れの上に彼女を浮かべていた
膨れた船の帆のように
彼女は浮かび ずっと歌っていた
歌っていた 何曲かの古いバラードを
まるでひとりのナイアード
この小川で生まれた妖精のように

だがこの不思議なメロディも
音のようにすばやく過ぎてゆく
波を受けてドレスは重くなり
やがて深い淵へと
この哀れな狂女を引きずり込んだ
ただ今始めたばかりの
彼女のメロディアスな歌を残して


ご存知シェイクスピアの「ハムレット」、その悲劇のヒロイン、オフィーリアの死のシーンです。もちろんシェイクスピアのオリジナルではなく、そこからインスパイアされた独自の詩です。ベルリオーズといえば、大作「ロミオとジュリエット」などシェイクスピアにまつわる作品もありますし、かなり思い入れを持って書いた歌曲なのではないでしょうか。この詩を書いたエルネス・ラグヴェという人は19世紀に活躍した作家で、詩や小説の他に戯曲も書いていた人なのだそうです。詩は非常にビジュアルで、歌にならなくてもとても鮮烈な印象を受けますので、ベルリオーズの食指も思わず動いてしまったということなのでしょう。
悲劇的な内容ではありますが、音楽はなぜか非常に醒めて淡々とした表情。決して短調で暗くならないところが何とも不思議な情感をかもし出します。
1842年に独唱曲として書かれ、のちに女声合唱に編曲されました。作品番号18はその合唱版につけられたナンバーのようです。

( 2010.08.29 藤井宏行 )


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