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La Pintade   M.50  
  Histoires naturelles
ホロホロ鳥  
     博物誌

詩: ルナール (Jules Renard,1864-1910) フランス
    Histoires naturelles  La Pintade

曲: ラヴェル (Maurice Ravel,1875-1937) フランス   歌詞言語: フランス語


C'est la bossue de ma cour. Elle ne rêve que plaies à cause de sa bosse.

Les poules ne lui disent rien : brusquement,elle se précipite et les harcèle.

Puis elle baisse sa tête,penche le corps,et,de toute la vitesse de ses pattes maigres,
elle court frapper,de son bec dur,juste au centre de la roue d'une dinde.

Cette poseuse l'agaçait.

Ainsi,la tête bleuie,ses barbillons à vif,cocardière,elle rage du matin au soir.
Elle se bat sans motif,peut être parce qu'elle s'imagine toujours
qu'on se moque de sa taille,de son crâne chauve et de sa queue basse.

Et elle ne cesse de jeter un cri discordant qui perce l'air comme une pointe.

Parfois elle quitte la cour et disparaît.
Elle laisse aux volailles pacifiques un moment de répit.
Mais elle revient plus turbulente et plus criarde.
Et,frénétique,elle se vautre par terre.

Qu'a-t-elle donc ?
La sournoise fait une farce.
Elle est allée pondre son oeuf à la campagne.
Je peux le chercher si ça m'amuse.
Elle se roule dans la poussière,comme une bossue.

こいつはうちの庭のせむしだ。彼女は自分のその瘤のせいで よくないことしか夢に見ない

めんどりたちは別に彼女に何も言わないのに:突然、彼女は襲い掛かり苦しめるのだ

それから彼女は頭を低くし、体を前かがみにして、その細い足を全速力で走らせ、
その硬いくちばしで突きに行くのだ、七面鳥の尻尾のど真ん中を

この気取り屋がむかついてしょうがないから

そんな風に、青い頭で、口髭をびくつかせ、この軍国主義者、彼女は朝から晩まで怒り狂っている
彼女は理由もなく喧嘩する、それはたぶん彼女がいつも思っているからだろう 
みんなが自分の体形や、その禿げ頭や 短い尻尾を馬鹿にしているのだと

そして、彼女は絶え間なく不協和な叫びを立てる、剣の切っ先のように空気を突き刺す叫びを

時折彼女は庭を離れ 消えてしまう
ほんの一瞬 平和な家禽たちをほっとさせる
だが彼女は戻ってくるのだ ずっと荒々しく そしてずっと騒々しく
そして、狂ったかのように、地面を転げまわる

何をこいつは一体しているというのだ?
この小賢しいやつは芝居をしている
彼女は卵を産みに野原へ行って来たのだ。
私はそいつを探しにいこうか もし面白いのなら
彼女は埃の中を転げまわる、せむしのように


すみません。ここで使っている「せむし」という言葉も現代では使ってはならない言葉なのでしょうけれども、この詩句の中で言葉をどう選んでもこの語以外に当てはまる日本語が見つかりませんでしたので、お叱りを受けることを覚悟でこう訳させて頂きました。お叱りを受けるついでにコメントしておきますと、詩の最後にある「せむしのように転げまわる」というのはフランス語の慣用句で、腹を抱えて笑い転げるという意味なのだそうです。なるほど腹を抱えますから背中は曲がりますね。そこの部分のピアノの早いパッセージはほんとうにこの鳥が笑い転げているかのようです。もっともこれはこの鳥の習性なのだそうで、産んだ卵を天敵から守るためにこうやって気を引いているというのがあるようですが...

冒頭から転げまわるような激しいピアノのパッセージ、叩きつける打鍵はこの鳥の鳴き声でしょう。確かに攻撃的です。どこかにいなくなってしまった後にひととき静寂が訪れ、それがまたこの鳥の再登場と共にけたたましい騒ぎになる、露骨と言えば露骨な処理ですがやはり巧いです。

( 2009.09.10 藤井宏行 )


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