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Le Grillon   M.50  
  Histoires naturelles
コオロギ  
     博物誌

詩: ルナール (Jules Renard,1864-1910) フランス
    Histoires naturelles  Le Grillon

曲: ラヴェル (Maurice Ravel,1875-1937) フランス   歌詞言語: フランス語


C'est l'heure où,las d'errer,l'insecte nègre revient de promenade
et répare avec soin le désordre de son domaine.

D'abord il ratisse ses étroites allées de sable.

Il fait du bran de scie qu'il écarte au seuil de sa retraite.

Il lime la racine de cette grande herbe propre à le harceler.

Il se repose.

Puis il remonte sa minuscule montre.

A-t-il fini ? Est-elle cassée ? Il se repose encore un peu.

Il rentre chez lui et ferme sa porte.

Longtemps il tourne sa clé dans la serrure délicate.

Et il écoute :

Point d'alarme dehors.

Mais il ne se trouve pas en sûreté.

Et comme par une chaînette dont la poulie grince,i
l descend jusqu'au fond de la terre.

On n'entend plus rien.

Dans la campagne muette,les peupliers se dressent
comme des doigts en l'air et désignent la lune.

今はちょうどこんな時だ、さまよい歩きに疲れて、この黒い虫は散歩から戻り 
散らかった自分の棲家を丁寧に片付ける

最初に彼は狭い砂地の通り道をならす

おが屑をこしらえて非常口の敷居に敷き詰める

どうにも邪魔なそこの大きな草の根にやすりをかけて削る

一休みする

それから彼の小さな時計のネジを巻く

巻き終えたのか?時計が壊れたのか?彼はまたちょっと一休みする

彼は家に戻ってドアを閉める

長い間 彼は鍵を複雑な鍵穴に突っ込んでいる

それから耳を澄ます

外には警戒すべきことはない

だがまだ安全というわけではない

そこでギイギイいう滑車の鎖のように、
彼は地の底へと降りてゆく

それからは 何も聴こえない

静かな野原では、ポプラの木々が空に向かってそびえ 
月を指している指のように立っている


第2曲目は、この歌曲集5曲の中で唯一鳥でない生き物が選ばれました。念のため申し添えて置きますがルナールの原作の方は鳥や昆虫ばかりでなく、家畜や爬虫類、その他もろもろ含め登場し、まさに博物誌の名に恥じない陣容を誇っています。ラヴェルがそこからテキストを選ぶときに、やはりどうしても音的に魅力的な素材に偏ってしまうというのはどうにも仕方ないところはあるのでしょう。ただ個人的には彼の曲をつけた「犬」とか「ヤギ」とかも聴いて見たかったところです。
さて、この第2曲ですが、神経質この上なく鳴き続けているこの小さな虫の描写にピアノのオスティナートがしつこく、しつこく使われています。この鳴き声と情景描写にとピアノは大活躍。くるくると姿を変えるピアノの表情は見事としか言いようがありません。小さな虫の描写らしく小声でささやくように曲全体を通す声も印象的。

( 2009.09.10 藤井宏行 )


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