Tröstung Op.71-1 6 Lieder |
慰め 6つの歌曲 |
Werde heiter,mein Gemüte, Und vergiß der Angst und Pein! Groß ist Gottes Gnad' und Güte, Groß muß auch dein Hoffen sein. Kommt der helle,gold'ne Morgen Nicht hervor aus dunkler Nacht? Lag nicht einst im Schnee verborgen Tief des Frühlings Blütenpracht? Durch die Finsterniß der Klagen Bricht der Freude Morgenstern; Bald wird auch dein Morgentagen, Gottes Güt' ist nimmer fern! |
陽気になれ、わが心よ そして恐れや痛みを忘れるのだ! 偉大なるは神の慈愛と善意 お前の希望もまた偉大であらねばならぬ 明るく輝かしき朝が来たならば 暗き夜より飛びださぬのか? 今まで雪の中に隠れていたのは 春の花の輝きではないのか? 嘆きの暗闇を通り抜けて 喜びの朝の星が輝き出す すぐにお前にも朝がやってくるだろう 神の善意はさほど遠くにはないのだから |
メンデルスゾーン存命中では最後の出版となる作品71(1847)はかなり作曲年代は幅があり、古いものでは1842年、そして新しいのはこの出版の年でもあり彼の死の年でもある1847年。1847年の作品はまさに彼の白鳥の歌とも言える澄み渡った美しさに満ちています。この第1曲は1845年の作曲ということで最後の年ではないのですが、姉の突然の死に打ちひしがれている彼の心を見事に表しているかのような詩と音楽。私の邪推でしかないのでしょうけれども、恐らくこの歌曲集を姉が亡くなったあと編むにあたって最初に目が行ったのも手元にあったストックの中からこの曲だった、ということなのではないのでしょうか。この歌曲集最後の曲「夜の歌」と並べて詞を読み、そして音楽を聴いてみると彼のここで思ったことというのが痛いほど響いてきます。残念なことにこの作品71をまとめてプログラムに乗せるという人はなかなかおられないので、彼のこの歌曲集の深みというのは知られることなく、他の曲はともかくこの第1曲などはあまり歌われることのないものとなってしまっています。商売っ気のある音楽商がもしこの歌曲集を「メンデルスゾーンの白鳥の歌」として売り出したならば、もしかするとこの6曲はシューベルト並みのポピュラリティを得たかもしれないと思うと、歴史の皮肉には言葉にし難いものがあります。どうか彼の生誕200周年、この歌曲集のすべての曲がもっと多くの人の目に触れることを望んでやみません。
( 2009.09.05 藤井宏行 )