Rondel chinois L 17 |
中国のロンデル |
Sur le lac bordé d'azalée De nénuphar et de bambou Passe une jonque d'acajou A la pointe effilée. Une chinoise dort voilée D'un flot de crèpe jusqu'au cou. Sur le lac bordé d'azalée De nénuphar et de bambou Sous sa véranda dentelée Un mandarin se tient debout Fixant de ses yeux de hibou La dame qui passe isolée Sur le lac bordé d'azalée De nénuphar et de bambou |
湖はつつじに囲まれ 睡蓮や竹にも囲まれている 上をマホガニー製のジャンク船が通り過ぎる その舳先は尖っている 眠るひとりの中国娘は包まれている 溢れかえるような薄絹に首まで 湖はつつじに囲まれ 睡蓮や竹にも囲まれている ギザギザなベランダの下に 中国男が立っている フクロウの眼でじっと見つめる ひとり通り過ぎてゆく貴婦人を 湖はつつじに囲まれ 睡蓮や竹にも... |
これもドビュッシーには珍しいコロラトゥーラの技巧が全開の作品です。冒頭から高い声のヴォカリーズで度肝を抜きますし、微妙な五音音階もメロディも耳に優しいです。ほとんど取り上げられることはないようですが、彼の異国趣味が奇妙にソプラノの技巧的なメロディにはまってなかなかに面白い作品だと思います。
作詞者は不詳なようですが、あまり良く出来た詞のようにも思われず、誰か本職の詩人ではない人が即興で戯作したようなものなのではないでしょうか。
録音は極めて少ない曲ですが、EMIの歌曲全集の中では多くの他の初期作品が無視されている中、これだけはマディ・メスプレの非常に印象的なソプラノで収録されています。(2009.09.03)
2012年にリリースのナテリー・デッセーが歌ったドビュッシー歌曲集では、この詩の作者をマリウス・ディヤールとしておりました。裏を取っているわけではないですが、一応詩人名を直しておきました。この人は詩人のようなので私の推測は間違っていたことになりますが、私が言うのもなんですがあまり巧い詩のようにはやはり思えません。
( 2013.09.21 藤井宏行 )