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Il poveretto    
 
哀れな者  
    

詩: マッジョーニ (Manfredo Maggioni,181?-187?) イタリア
      

曲: ヴェルディ (Giuseppe Verdi,1813-1901) イタリア   歌詞言語: イタリア語


Passegger,che al dolce aspetto
par che serbi un gentil cor,
porgi un soldo al poveretto
che da man digiuno è ancor.

Fin da quando era figliuolo
sono stato militar
e pugnando pel mio suolo
ho trascorso e terra e mar;

Ma or che il tempo su me pesa,
or che forza più non ho,
fin la terra che ho difesa,
la mia patria m'oblio.

Passegger,che al dolce aspetto
par che serbi un gentil cor,
porgi un soldo al poveretto
che da man digiuno è ancor.

道行くお方、その優しそうなお顔は
寛大なお心をお持ちなことを表していますな
ほんの1ソルドをこの哀れな者にお恵み下さい
ずっと何も食べていないのです

まだ若者だったときからずっと
私は兵士でございました
そしてわが祖国のために戦って参りました
大地や海を渡って

ところが時がわが身に重くのしかかり
もはや力もなくなってしまった今
私が守ってきたこの地
わが祖国すら私を忘れたのです

道行くお方、その優しそうなお顔は
寛大なお心をお持ちなことを表していますな
ほんの1ソルドをこの哀れな者にお恵み下さい
ずっと何も食べていないのです

私がまだ子供の頃にはこの歌と同じように第二次大戦で傷つき、物乞いをしていかなかれば暮らしていけないような人を何度か町で見かけたような記憶があります。戦争を長いことしなくて済んだ日本ではこんな感覚も今や分からなくなってきてしまっているのかも知れませんが、世界にはなお戦いで命は取りとめたものの、このような形で命を繋がなければならなくなった元兵士たちがたくさん生まれているのだ、という現実はきっちり見据えておかなければなりません。
ヴェルディの音楽は力強く、格調高いもの。物乞いはしていてもかつて国のために力一杯貢献したという自負心だけは捨てていない姿でしょう。悲哀に満ちた卑屈なものにしていないところに作曲者の彼ら傷病兵士たちへの共感のようなものも感じさせて実に素晴らしい歌となりました。

( 2009.08.22 藤井宏行 )


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