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Oh! quand je dors   S.282  
 
おお!私が眠りにつくときには  
    

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les Rayons et les Ombres 27 Oh! quand je dors,viens auprès de ma couche

曲: リスト (Franz Liszt,1811-1886) ハンガリー   歌詞言語: フランス語


Oh! quand je dors,viens auprès de ma couche,
comme à Pétrarque apparaissait Laura,
Et qu'en passant ton haleine me touche...
Soudain ma bouche
S'entrouvrira!

Sur mon front morne où peutêtre s'achève
Un songe noir qui trop longtemps dura,
Que ton regard comme un astre se lève...
Soudain mon rêve
Rayonnera!

Puis sur ma lèvre où voltige une flamme,
Éclair d'amour que Dieu même épura,
Pose un baiser,et d'ange deviens femme...
Soudain mon âme
S'éveillera!

おお!私が眠りにつくときには、来ておくれ 私のベッドに
ちょうどペトラルカのもとに現れたラウラのように
そして通りすぎるときには その吐息で私にそっと触れておくれ
すぐにわたしの口に
それは入っていくのだ!

私の憂鬱そうな顔の上、それはたぶん
ずっと続いている暗い夢のせいなのだけれど
そこに星が昇るようなあなたの眼差しが射すならば
すぐに私の夢は
輝きだすのだ!

それから炎と燃え立つ私のくちびるに
神様が清めて下さっている愛のきらめきに
くちづけを与えてくれて、天使よりひとりの女性へと変わるならば
すぐに私の魂は
目覚めるのだ!

色々な言葉の歌曲を残しているフランツ・リスト、フランス語の歌曲ではヴィクトル・ユーゴーの詩に付けたものが目に付きます。その中でもこの曲が一番有名で良く取り上げられますでしょうか。彼独特の浸りこむ美しいメロディにあふれた美しい恋歌です。ペトラルカといえばご存知14世紀イタリアの詩人。ここでも出てくるラウラという女性に捧げた一群の恋愛詩でよく知られています。このユーゴーの詩、ちょっと女性的な感じのする柔和なところがあるのですが(実際女声によって良く歌われていますし)、それはこの「ラウラの前に現れるペトラルカのように」などという比喩にも現れているでしょうか。初めは私もユーゴーが女性に仮託して書いた詩かと思い、そう訳していたのですが、最後の第3連にきてこの相手が女性であることが分かりましたので急遽見直しを行いました。

この詩はペーター・コルネリウスの訳したドイツ語詞によっても歌われることがけっこうあり、その場合のタイトルは「O komm im Traum」(「夢に来ませ」と訳されることが多いでしょうか)となっています。

  O komm im Traum,komm in stillester Stunde,
  wie einstens Laura Petrarc erschien zur Nacht,
  daß mir dein Hauch heile jegliche Wunde,
  wenn meinem Munde ernähret sacht.

   おお 夢の中にきて 一番静かな時間に
   昔 ラウラのもとにペトラルカが夜 現れたように
   あなたの吐息は私のどんな傷も癒す
   私の口が静かに受け取るときには

  Wenn düstre Wolken die Stirn mir umsäumen,
  die,ach,zu lang dem Herzen Leid gebracht,
  du blickst,ein Stern,wie aus himmlischen Räumen,
  daß in mein Träumen ein Eden lacht.

   暗い雲が私の顔を取り巻いているとき
   それは、ああ、ずっと長いことこの心に悲しみが宿っていたこと
   あなたが眼差しをくれれば、天に輝く星のような
   それは私の夢の中で エデンの園が微笑むこと

  Und deinem Mund meine Lippen erwähle,
  weil ihre Glut,ach von Gott ward entfacht,
  und werde Weib,du Engel ohne Fehle,
  daß meine Seele in Wonn' erwacht.

   そしてあなたの口が私のくちびるを選んでくれたら
   その灼熱は、ああ 神様の掻き立てて下さったもの
   そしてひとりの女性となってくれたなら、非の打ちどころない天使のあなたが
   それは私の魂が喜びの中で目覚めること

( 2009.04.30 藤井宏行 )


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