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Tom der Reimer   Op.135  
 
詩人トム  
    

詩: フォンターネ (Theodor Fontane,1819-1898) ドイツ
       原詩:an old Scottish ballad

曲: レーヴェ (Johann Carl Gottfried Loewe,1796-1869) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Der Reimer Thomas lag am Bach,
Am Kieselbach bei Huntly Schloß.
Da sah er eine blonde Frau,
Die saß auf einem weißen Roß.

Sie saß auf einem weißen Roß,
Die Mähne war geflochten fein,
Und hell an jeder Flechte hing
Ein silberblankes Glöckelein.

Und Tom der Reimer zog den Hut
Und fiel auf's Knie,er grüßt und spricht:
“Du bist die Himmelskönigin!
Du bist von dieser Erde nicht!”

Die blonde Frau hät an ihr Roß:
“Ich will dir sagen,wer ich bin;
Ich bin die Himmelsjungfrau nicht,
Ich bin die Elfenkönigin!

Nimm deine Harf und spiel und sing
Und laß dein bestes Lied erschalln!
Doch wenn du meine Lippe küßt,
Bist du mir sieben Jahr verfalln!”

“Wohl! sieben Jahr,o Königin,
Zu dienen dir,es schreckt mich kaum!”
Er küßte sie,sie küßte ihn,
Ein Vogel sang im Eschenbaum.

“Nun bist du mein,nun zieh mit mir,
Nun bist du mein auf sieben Jahr.”
Sie ritten durch den grünen Wald,
Wie glücklich da der Reimer war!

Sie ritten durch den grünen Wald
Bei Vogelsang und Sonnenschein,
Und wenn sie leicht am Zügel zog,
So klangen hell die Glöckelein.

詩人のトーマスは小川に寝そべる
小石だらけの小川 ハントリーの城のそば
そこで見たのはブロンドの女性
白い馬にまたがった

彼女は白い馬にまたがっていた
そのたてがみはきれいに編まれていて
それぞれの網目には明るくつるされていた
キラキラした銀の鈴が

さて詩人トムは帽子を脱いで
膝元にかがんで彼女にあいさつし、そして言った
「あなたは天界の女王さまですね!
 あなたはこの地上におられるお方ではない!」

そのブロンドの女性は馬を止めて
「そなたに告げようぞ、わらわが誰なのかを
 わらわは天界の若きおなごではない
 妖精の女王なのじゃ

 そなたのハープを取れ、弾きそして歌うのじゃ
 そなたの一番の歌をわらわに聞かせよ!
 されどもし そなたがわらわのくちびるにくちづけるならば
 そなたはわらわのもとで7年間を仕えねばならぬ!」

「喜んで! 7年間、おお女王さま
 あなたさまにお仕えするなど、私はまるで恐くはございません」
彼は女王にキスして 女王さまも彼にキスをした
一羽の小鳥がトネリコの木で歌った

「さあこれでそなたはわらわの物じゃ、わらわの側に寄れ
 さあこれでそなたはわらわの物じゃ 7年の間」
ふたりは緑の森の馬で駆けていった
なんと詩人の幸せだったこと!

ふたりは緑の森の馬で駆けていった
鳥の歌声と太陽の光あふれる中を
そして女王が軽やかに手綱を引けば
鈴が明るい音を響かせる


レーヴェ晩年のたいへんユーモアあふれるバラード、もともとの詩はスコットランドのバラードThomas The Rhymer(吟遊詩人トーマス)。このトーマスというのは13世紀に実在した人Thomas Learmonth (トマス・リーマス Learmontなどとも綴る)なのだそうで、吟遊詩人としてだけではなく予言者としても名高い人だったのだそうです。その予言は驚くほど良く当たったのだそうですが、その理由がここで描かれているように7年間妖精の女王のもとにいたから、とのことです。ここではその伝説をなんとものんびりした、微笑ましいバラードにしました。レーヴェ晩年の力の抜けた詩的世界(それにしてはピアノ伴奏はかなり凝っていて難しいのだそうですが)は聴いていてもほっとさせられます。
なお、ドイツ語でReimeというのが、韻を踏んでいるだけで内容のないヘボ詩という意味があるためか、この曲のタイトルに「へぼ詩人トム」あるいは「へっぽこ詩人トム」という邦訳をつけているものも見受けられますが、もともとが英語の原題をこう訳しているものなのでこの邦題には疑問が残ります。もっとも「へぼ詩人」と付けたくもなるようなちょっと抜けた雰囲気のある登場人物であるのもまた事実ですけれども...

( 2009.04.30 藤井宏行 )


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