Die Liebende schreibt Op.86-3 6 Gesänge |
恋する女が書いていること 6つの歌 |
Ein Blick von deinen Augen in die meinen, Ein Kuß von deinem Mund auf meinem Munde, Wer davon hat,wie ich,gewisse Kunde, Mag dem was anders wohl erfreulich scheinen? Entfernt von dir,entfremdet von den Meinen, Führ' ich stets die Gedanken in die Runde Und immer treffen sie auf jene Stunde, Die einzige: da fang' ich an zu weinen. Die Träne trocknet wieder unversehens: Er liebt ja,denk' ich,her,in diese Stille, O solltest du nicht in die Ferne reichen? Vernimm das Lispeln dieses Liebewehens; Mein einzig Glück auf Erden ist dein Wille, Dein freundlicher zu mir; gib mir ein Zeichen! |
私の目を見つめるあなたの眼差し 私のくちびるにあなたのくちびるを重ねるくちづけ 私のように、それを知ってしまったら 他のどんなことに喜びを感じられるというのでしょう? あなたから離れ、私の周りからも疎まれて 私の考えはぐるぐると巡っています そして考えることはいつもあの時のことに行き着くのです たったひとつの時に、そして私は泣くのです 涙はすぐに乾きます そう あの人は愛してくれたのだと私が思えば この静けさの中で おお あなたは私にはもう届かないほど遠くにいるのですか? お聞きください この愛の溜息のささやきを この世で私のすべての幸せはあなたの心なのです あなたの私への優しさ、そのしるしをください |
1807年に書かれたゲーテのソネット集より取られたこの詩、ゲーテの原典を見ますとこの女性、この手紙だけでなくあと2つ書いており、ソネット集の中での3部作となっています。それぞれの題はこの「Die Liebende schreibt」を皮切りに「Die Liebende abermals(恋する女はもう一度)」と「Die Liebende nicht enden(恋する女は終わらない)」と何だか微笑ましくもなってしまうようなタイトルですが、中身は至極真剣ですので誤解のありませんように。このソネット集、ゲーテが何と58歳の時の作品ですけれども、当時滞在したイェーナの書店の18歳の養女ミンヒェンへの愛が書かせたのだそうで、その恋への熱情には恐れ入るしかありません。おそらくこの恋する女というのはミンヒェンに仮託して書いた愛の詩でしょうか。
メンデルスゾーンのつけた音楽はしみじみと、静かに訴えかける美しい曲です。バーバラ・ボニーの歌った美しい録音がありますが、他にはあまり多く録音される曲でもないのか、まだ他の録音は見つけられておりません。作曲者の死後出版されたもののため作品番号は86と大きいですが、作曲はかなり若いころのもののようです(1831年)
( 2009.04.01 藤井宏行 )