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Paimenlaulu   Op.100-1  
  Kanteletar-Lauluja
羊飼いの歌  
     カンテレタールの歌

詩: カンテレタール(フィンランド抒情詩) (Kanteletar,-) フィンランド
    I: Ensimmäinen kirja 171 Mipä meiän paimenien

曲: キルピネン (Yrjo Kilpinen,1892-1959) フィンランド   歌詞言語: フィンランド語


Mipä meiän paimenien,
kupa karjan kaitsijoiden?
Ei ole paha paimenien,
pah' ei karjan kaitsijoiden;

Kiikumma joka kivellä,
laulamma joka mäellä,
joka suolla soittelemma,
lyömmä leikkiä aholla,
syömmä maalta mansikoita,
ja juomma joesta vettä.
Marjat kasvot kaunistavi,
puolukat punertelevi,
vesi ei voimoa vähennä,
jokivesi varsinkana.

Mipä meiän paimenien,
kupa karjan kaitsijoiden?
Ei ole paha paimenien,
pah' ei karjan kaitsijoiden,
pah' ei karjan kaitsijoiden!

羊飼いに足りないものは何
この広い緑の草原の中で?
羊飼いに足りないものは何もない
この広い緑の草原の中では

僕らは岩を飛び跳ね
丘の上で歌を歌う
沼をかき回して
野原で遊ぶ
茂みの木いちごを食べて
泉の水をすくって飲む
木いちごの実は明るい色で
僕らの頬を真っ赤に染めるし
水はとってもきれいに澄んで
僕らの心を幸せにする

羊飼いに足りないものは何
この広い緑の草原の中で?
羊飼いに足りないものは何もない
この広い緑の草原の中では
この広い緑の草原の中では!

北欧の歌曲というと言葉の壁のためか、なかなか広く紹介されることが少ないように思えます。そんな中、第二次大戦前からドイツでも広く紹介され、往年の名バリトン、ゲルハルト・ヒュッシュの録音もあるこのイリョ・キルピネンは非常に珍しい例外と言えるかも知れません。
彼は生涯に600曲以上の歌曲を書き、まさにフィンランドの歌曲王というにふさわしい作曲家です。ドイツ語の詩に付けた歌曲が多いのですが、そんな中からここでは彼の最晩年の作品、故郷フィンランドの伝承詩から作った64曲のカンテレタルからその第1曲を取り上げてみました。
この表題「カンテレタル」というのが日本でいう万葉集にでもあたる伝承詩集と言えましょうか?
(これに対応するのがレミンカイネンの冒険で知られる有名な叙事詩「カレワラ」。こちらは古事記に当たりますね)
1840年に医師でもあったロンルートという人が、ロシアの方まで探して収集した伝承詩に基づいて出版したものです(カレワラも同じ人の編纂)。カンテレとはフィンランドの民族楽器で、タルは娘という意味だそうです。
http://www.bmworld.com/new-finland/kalevala.htm

キャリアの最後に吹っ切れたような民族の伝統に根差した音楽を、しかもすがすがしいほどに素朴な音楽を残したキルピネン、民謡そのままかと思われるような素朴な旋律に爽やかで優しいピアノ伴奏。とても素敵な歌曲集だと思います。

カミラ・ニュルンドのソプラノ、ペーター・シュタムのピアノでこの歌は聴くことができます(CPO)。このCDはハンス・リュドマンのバリトンも交えて、この素朴なカンテレタル64曲中から26曲を抜粋して紹介してくれています。
私にとっては北欧の歌曲の中でも1、2を争う魅力的な音楽にきこえます 。ぜひお試しあれ。

( 2004.05.11 藤井宏行 )


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